リンクバナー
時潮

税務援助と無償独占
税経新人会全国協議会副理事長佐伯 正隆
line
10月末に税理士会支部より「平成16年分確定申告無料相談へのお願い」が送付されてきた。独立開業以来毎年のように2月後半と3月初旬の2回、区役所の出張所等に出向いて確定申告の無料相談にあたってきたが、何か割切れないものを感じていた。それは

1 相談内容が税理士の専門的な知識を必要とするようなものなのか
2 例年同じ方が相談にみえている

3
税理士会の自主的な小規模対策というより税務署の下請け的な、ややもすると「無責任な」相談となっていないか

などによるものである。

税務援助については、昭和55年税理士法改正により、税理士会会則において、「委嘱者の経済的理由により無償又は著しく低い報酬で行なう税理士業務に関する規定」を絶対的記載事項とする旨の規定が、法定化された。そして税務援助実施細則(東京税理士会)では、現に税理士又は税理士法人に委嘱していない小規模な事業者等を対象者として税務援助業務について規定している。

日税連は今年6月「新時代における税務支援のあり方」(中間発表)を発表し税務援助のあり方について見直すことに着手した。しかし、その内容は上記のような私の疑問を解決する方向ではなく、さらに助長するような内容となっている。

日税連の説明によると、消費税法の「改正」により課税事業者が約150万人輩出されることとなった。そのため「税理士及び税理士会の社会的使命を果たすこと」「税理士の独占業務を担保する制度として」税務援助事業のあり方を抜本的に見直すことが喫緊の課題として急浮上したとのことである。

「税理士及び税理士会の社会的使命」については、いろいろな意見はあるだろうが、納税者の代理人として納税者の権利を擁護し、そのような法制度の構築をめざすことにあると考える。税理士に委嘱することが出来ない者にまで課税を強化するのではなく、憲法25条に定められた生存権を保障するような税制を目指していくこと等ではないだろうか。

「税理士の独占業務を担保する制度」として現在実施されている税務援助事業がやむを得ないのであれば、独占業務についての見直しもありうるのではないだろうか。

所得税の確定申告についての税理士の業務独占は税務代理・税務書類の作成は別として、税務相談についてはその実態は崩壊しているのではないだろうか。

現在、年所得300万円以下の小規模事業者の記帳や確定申告についての相談がどこで行なわれているか明らかではないが、青色申告会、商工会議所、民主商工会、全建総連(土建)などの団体が相当数を担っているのではないかと推察され、税理士がその大半を担っているとは考えられない。

これらの団体が戦後どのような経過で誕生し、どのように発展してきたかは税制・税務行政のあり方と大きく関係している。

歴史的に見れば、大衆課税が推し進められるなか、納税者の税制と税務行政の民主化を求める運動が発展し民主商工会などが結成され、権力的な徴税を推進する税務当局にとって重大な障害になるとともに、政治的には都市部における自民党の支持基盤が崩れ始めたのである。そのため国税庁は昭和38年に全国的な民商弾圧を開始、さらに民商対策の一環として青色申告会の育成も強力に推進した。

国税庁による当局の意にそう団体の育成(国家予算をも使っての)、自主的な納税者団体の敵視政策を止めることが必要ではないだろうか。

税理士・税理士会は行政の都合によるのでなく、納税者(国民)の基本的な権利を守り発展させる立場から自主的な税務相談事業を推し進めるべきではないだろうか。
文責さえき・まさたか

▲上に戻る


税経新人会全国協議会