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時潮

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税理士法第1条「税理士の使命」
副理事長 櫻木 敦子
現在、日税連では、「次期税理士法改正に関する答申(2019.4.17日税連制度部)」を公表し、税理士会会員からの意見募集を行っています。これは2017年9月に出された神津日税連会長の次期税理士法改正に向けた制度部への諮問に対する答申であり、意見提出の期限は11月30日とされています。

2014年(平成26年)改正から5年が経過し、働き方改革、ICT化、税理士試験の受験者数減少など、税理士業界を取り巻く環境が急速に変化しています。答申では「1.ICT 化への税理士法の対応」、「2.ICT 化社会における税理士事務所のあり方」、「3.税理士法人への対応」、「4.試験制度のあり方」、「5.平成 26 年法改正における未実現項目の取扱い」、「6.業務の適正化に向けた環境整備」を掲げ、最後に「7.引き続き検討を要する項目」を挙げています。税理士制度の理念を表しその根幹を成すものである第1条の「税理士の使命」については、「過去の歴史における検討経過も踏まえつつ議論した結果、現時点において速やかに改正すべきものではない」とされ、今後の検討項目とされました。

税理士法は、シャウプ勧告の「納税者の代理を立派につとめ」ることを理念として1951年7月15日より施行されました。しかし、その第1条では、税理士の職責として「税理士は、中正な立場において、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務を適正に実現し、納税に関する道義を高めるように努力しなければならない。」とされ、納税者の権利を擁護するという文言は入りませんでした。そしてこの第1条は、1980年(昭和55年)改正まで改正されずに残ることになります。

1972年、日税連が今後の税理士法改正の基本理念として「国民のための税理士制度の確立」という理想のもと、「税理士法改正に関する基本要綱」をとりまとめました。そこでは税理士の使命として第1 条を次のように改めることとしました。

「(1) 税理士は、納税者の権利を擁護し、法律に定められた納税義務の適正な実現をはかることを使命とする。
(2) 税理士は、前項の使命にもとづき、誠実にその職務を行ない、納税者の信頼にこたえるとともに、租税制度の改善に努力しなければならない。」

当時の税理士の総意として作成された基本要綱でしたが、日税連は各単位税理士会や会員からの意見を徴収する手続きをとらないまま1979年4月5日に突然基本要綱を凍結することを決定しました。

1980年(昭和55年)改正では、第1条が「税理士の職責」から「税理士の使命」へ、また、「中正な立場」が削除され、「税務に関する専門家として、独立した公正な立場において」とされ、「申告納税制度の理念にそって」という文言が追加されました。しかし、納税者の権利擁護の文言は入らず、基本要綱の理念とはほど遠いものに後退しました。

第1条(税理士の使命)「税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。」

今回の答申では「財務大臣の総会決議取消権(第49条の17)は見直すこと」が

平成26年改正における未実現項目として要望されています。この要望には賛成します。しかし、さらに踏みこみ財務大臣の「一般的監督権(第49条の19)」のほか「会則認可権(第49条の2)」、「総会決議等の報告義務(第49条の9)」についても見直すべきだと考えます。税理士の使命が納税者の権利を擁護するという立場であることから考えると、税理士と税務当局とは常に対等な立場にならなければなりません。税理士の倫理規定により、税理士・税理士会が自らを律していくのであるから、このような条文は不要ではないでしょうか。

意見募集は、国民のための税理士制度の確立を実現するための良い機会です。たくさんの声を届けたいものです。 

(さくらぎ・あつこ:東京会)

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