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時潮

時潮
参院選後の課題
機関誌部長 清野 智江
7月21日の参院選は自民、公明の与党が過半数を維持する結果に終わりました。投票率は48.80%となり前回を約6 ポイント下回り、戦後2番目の低さで24年ぶりに50%割れとなりました。さっそく安倍首相は「安定した政治を支持してもらった」と勝利宣言をしましたが、全有権者のうち自民党に投票した人は2割程度に過ぎません。全権委任をしたわけではありません。
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憲法改正

改憲勢力は改正発議に必要な3分の2に届きませんでしたが安倍首相は「3分の2の多数はこれから憲法審査会の議論を通じて形成していきたい。期限ありきではないが私の任期中に何とか実現したい」と改憲を目指す姿勢に変わりなく2021年9月までの総裁任期中の改憲に意欲を示しています。自民党が提示した改憲案の4項目は自衛隊の明記、緊急事態対応、合区解消、教育充実ですが、これらは現行の憲法の下でも対応が可能で、改憲が不可欠とは言えません。

特に自衛隊明記は憲法9条を破壊するものです。憲法9条2項の戦力の不保持、交戦権の否認のしばりがなくなり「戦争をする国」になってしまいます。現状で改憲より重要な課題は数多くあります。例えば老後不安の問題は緊急を要しています。解決すべき課題の優先順位を間違わないで欲しいです。
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消費税率引き上げ

自民、公明の与党が過半数を維持したことで10 月の消費税率10%への引き上げが確実となっています。財務省が7月2 日に発表した2018年度の一般会計決算概要では、税収総額は60兆3564億円と28年ぶりに過去最高を更新し、ピークだったバブル期の1990年度の60兆1059億円を超えています。参院選公示日の4日に安倍首相は「経済を強くしていけば税収だって増えるんですよ。税収は今年過去最高になった。あのバブル時代も超えたんです」と強調していました。br>
税収の内訳を見ると、90年度と比較すると法人税と所得税は6兆円ずつ低く、消費税は13兆円も増加しています。大企業や富裕層が受ける減税の恩恵を消費税が穴埋めしています。

7月1日発表の日銀短観では、大企業・製造業の業況判断指数が2期連続で落ち込み、同じく1日に内閣府が発表した消費者心理を示す消費者態度指数は9か月連続で悪化、厚生労働省の9日の発表では毎月勤労統計で一人当たりの現金給与総額が5か月連続でマイナスとなっています。このような状況のなかで消費税率を引き上げることは経済を低迷させます。それは雇用問題へと波及し給与は下がり、年金も下がります。

消費税は低所得者ほど負担が重くなるため、国民の生活を直撃し困窮させます。消費税率を引き上げなくても所得税、法人税の税率を戻し、大企業、富裕層の課税を見直せば十分財源は得られます。消費税率の引き上げの中止、複数税率・インボイス制度の導入反対を今後も求めていくことが必要です。
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年金など社会保障

老後は公的年金以外に2000 万円の蓄えが必要と試算した金融庁審議会の報告書をきっかけに公的年金制度のあり方が参院選の争点となりました。この報告書で年金制度の不信と老後の不安が広がりました。政府は年金財政の健全性を調べる5年に一度の財政検証の公表を選挙後に先送りにしています。これでは将来の給付の姿が見えません。報告書をなかったことにするような姿勢ではいくら政府が説明しても国民は信用できません。

安倍首相は党首討論会で「負担を増やすことなく年金給付額を増やすという打ち出の小づちはない」と述べています。そうであるならば政府・与党が年金制度の現状や負担の必要性について資料を提示し理解してもらう姿勢が求められます。また老後の不安解消には年金の他に医療や介護サービスの充実、住宅の確保も必要です。本来、国民の健康で文化的に生活する権利を保障し現実のものとするために、国が社会保障制度を構築し必要な環境整備をする義務を負っています。国民に自己責任論を押し付け責任放棄することは許されません。

(せいのともえ:東京会)

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