安倍首相は7月に実施された参議院選挙後、消費税10%増税は「国民に信任された」と言い、政府は急ピッチでその準備を進めている。ところが、参議院選挙の出口調査でもその後の世論調査でも、消費税の増税反対が約6 割とその多数を占めている。
そもそも今、消費税の増税を強行すれば日本経済は底割れし、世界で初めての「先進衰退国」になることがきわめて高いことは、消費税導入から現在の8%になった歴史を見れば明らかである。
昨年まで内閣官房参与を歴任されていた京都大学大学院の藤井聡教授は「今回の増税はこれまでよりもひどい結果になることは、ほとんど避けられそうにない状況にある。第一に米中経済戦争、日韓外交摩擦、日米貿易摩擦、英国のEU 離脱といった未曾有の歴史的イベントは全て、日本の貿易を悪化させることは確実だからだ。第二に、これからわが国はオリンピック投資が終了するタイミングにも突入する。つまりこの10月の消費税増税は、日本経済を支える消費を除く経済成長の主力である外需と投資の双方が同時に低迷する状況で行われるものなのである」と指摘されている。
しかも残りの消費は国内総生産(GDP)の約60%を占めるがこの増税が大きな打撃を与えることになる。内閣府発表の7月の消費動向調査では、消費者心理を示す消費者態度指数は10カ月連続の低下となっている。これは2014年4月以来の低水準である。「暮らし向き」「収入の増え方」「雇用環境」「耐久消費財の買い時判断」の4指標の全てが前月よりも低下している。増税前の「かけ込み需要」どころか、国民は増税による暮らしの悪化に備えていると考えられる。以上の点から消費税10%増税が国民の暮らしに大打撃となるのは明らかである。
また消費税10%増税の次は、適格請求書等保存制度(いわゆるインボイス制度)の導入である。中小事業者は、事務負担が大きく増える。さらに約500万ある免税事業者が、課税事業者になることが迫られる。事務負担と納税負担の二つの増大は、中小事業者の経営に大きな打撃となり、事業の存続すら危ぶまれる状況となる。
消費税導入以来30年あまりが経過した。この30年間、国民の負担した消費税は372兆円。その一方で、大企業や大資産家への減税が行われてきた。法人税等の減収額は291兆円、所得税・住民税の減収額は270兆円にもなる。
国民の暮らしを悪化させ、中小事業者の経営を困難にし、日本経済に大きな打撃となる消費税10%増税は断固中止すべきある。そして、「応能負担原則」にかなったあるべき税制を構築すべきである。
2019年9月14日 |