税理士法改正に関する意見(案)
平成22年5月31日
日本税理士会連合会 税理士法改正に関するプロジェクトチーム
※参考 会員から寄せられた意見について
◇ 本意見(案)の取りまとめの経緯について
法律の改正を議論する際には、国民の利便、利益、安全等に適うものであること等あくまでも国民・納税者の目線に適った議論が行われることが肝要である。
今般、税理士法の改正について議論を行うに当たっては、税理士であるからこそ、一層、国民の立場に立脚することを自覚して臨む必要がある。
ちなみに、平成13年の税理士法改正の議論は平成3年6月に「税理士法改正に関する中間意見一短期的改正項目」を、平成5年4月に「税理士法の要改正項目及びその問題点に関する報告書」をそれぞれ取りまとめ、平成9年4月に「税理士法改正に関する意見(タタキ台)の審議状況」を公表し、最終的に行政との協議等を経て国会での審議に臨んだ経緯がある。このタタキ台を作成するに当たって、基本的な理念を以下のとおり表明している。
「…時代が要請する税理士制度を構築すべく、 税理士制度の発展、 租税制度への貢献、 申告納税制度の健全な発展への寄与、 税務行政手続における納税者の代理人たる地位の確立、 納税者、税務当局、税理士の三者の信頼関係の樹立を基本理念として…」
平成13年改正においては、こうした理念を踏まえ、多岐にわたる事項について改正を行ったものである。その後、規制改革の流れの中で、各省庁において規制にかかわる法律ごとに設定する見直し年度等を一覧にして公表することが平成18年に閣議決定されたことを受けて、税理士法について、財務省はその見直しの必要性の検討を平成23年度に実施するとしている。この機会に、税理士法を改めて見直し、税理士業界としての考え方を取りまとめる必要がある。つまりこの税理士法改正の意見の取りまとめは、平成23年度に実施されることが予定されている財務省の見直し作業に向けての作業の一貫として、位置付けられる。
当プロジェクトチームは、平成21年8月6日に設置され、平成21年11月25日の正副会長会に「税理士法改正に関するプロジェクトチームによるタタキ台(以下「PTタタキ台」という。)」を報告し、その内容について、平成22年3月31日を期限として会員に意見を求め、これを受けて会員からは3,251件の意見が寄せられた。これを基礎に、制度部が、「PTタタキ台に対する会員意見の方向性別件数」を集計し、平成22年4月21日の正副会長会に報告した。
この「税理士法改正に関する意見」は、制度部が行った集計を受けて、PTタタキ台の「改正要望項目」について見直しを行い、税理士法改正についての検討資料とすることを目的として取りまとめたものである。今後、この取りまとめを基にして、社会状況の変化に対応する税理士法改正のための議論が醸成されることを期待するものである。
I 税理士法のあり方について
税理士の使命は、税理士法第1条において、「税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。」と規定されており、税理士は、我が国の唯一の税務に関する専門家として位置付けられている。その基本理念は、申告納税制度であり、これは最も民主的で、かつ、国家財政の基盤として極めて重要な制度である。申告納税制度を更に発展させるためには、国民の利便性、安全性、緊急性を重視した所要の税理士法改正を行い、今まで以上に社会から信頼される税理士制度の構築が必要であるといえる。
税理士法は、直近の改正がなされてから既に10年が経過しようとしている。この問、IT社会への変革と経済社会の多様化・複雑化により、公共的使命を担う税理士の業務についても、益々高度化・専門化が進んできており、国民・納税者の要請に応え得る制度構築が必要である。
平成13年改正以降、目本税理士会連合会は各税理士会と協力して、いかにして国民・納税者の利便性や社会的な要請に応えていくべきか、いかにすれば税理士の資質の維持向上が図れるかということを念頭に、会則で研修受講を義務付けること等、資格制度に対する国民からの信頼性を確保するための諸施策を講じてきた。この度は、申告納税制度の更なる発展を期し、次世代を担う若者や社会人の受験者を増加させるための試験制度の見直しを含め、より国民から信頼される税理士を養成するための改正等について、積極的な提言を行うものである。
II 改正要望項目
1.税理士の業務に関する規定
(1)電子申告等の送信業務
【改正の方向性】
- 電子申告等の電磁的記録の送信業務も、法第2条第1項に掲げる「税理士業務」のうち「税務代理」に含める。
【理 由】
電子申告等の電磁的記録の作成におけるデータ作成と送信は、基本的には連続して行う業務で通常切り離すことはなく、データ作成者以外の者が単に送信のみを行うことは考え難い。したがって、他人の求めに応じて行う送信業務は法第2条第1項第1号の「税務代理」とすべきである。税理士にのみ代理送信が認められているのは、送信業務が、税務官公署への送信の確実性とその適否が重要な事務になり、税理士業務の一環であるからである。
【改正案】
(税理士の業務)
法第2条第1項第1号 税務代理(税務官公署(税関官署を除くものとし、国税不服審判所を含むものとする。以下同じ。)に対する租税に関する法令若しくは行政不服審査法(昭和37年法律第160号)の規定に基づく申告、申請、請求若しくは不服申立て(これらに準ずるものとして政令で定める行為を含むものとし、酒税法(昭和28年法律第6号)第2章の規定に係る申告、申請及び不服申立てを除くものとする。以下「申告等」という。)につき、又は当該申告等若しくは税務官公署の調査若しくは処分に関し税務官公署に対してする主張若しくは陳述につき、代理し、又は代行すること(これらの行為を電磁的記録の送信をもってする場合を含み、次号の税務書類の作成にとどまるものを除く。)をいう。)
(2)補助税理士制度のあり方
【改正の方向性】
- 他の税理士等の補助者として従事しながらも、一方で、「開業税理士」として他人の求めに応じて自己の税理士の業務も行うことができるようにする。
- 現行の「補助税理士」の呼称を「所属税理士」に変更する。
【理 由】
補助税理士制度創設の意義
補助税理士制度は、納税義務者から委嘱を受けた税理士等と補助者として業務を行う税理士との関係を明確にするために創設されたものであり、他の税理士等の事務所に雇用される税理士の法的地位を明確にしたうえで、税理士の資格を活用することに意義がある。
平成13年法改正以前においては、税理士であるにもかかわらず、雇用されている他の無資格の職員と同様に扱われるため、税理士としての資格を積極的に活用することができなかったが、本制度(法2)の創設により、法第31条の規定による復代理人選任手続きを要せずに税理士としての職能を発揮させることが可能となり、国民・納税者の利便性の向上に寄与する制度として定着していることは評価すべきである。
雇用契約関係の多様化に対応して
税理士が、他の税理士等の事務所に雇用される場合の契約関係については様々な態様が存在する。
そこで、法第2条第3項が創設された意義を尊重し、この条項を維持する一方で、雇用される税理士の登録区分を各事務所の実態に合わせて選択できるようにすることとする。
また、現行の「補助税理士」という呼称は、制度の趣旨を適切に表していないと考えられるので、「所属税理士」に変更する。
この改正により、他の税理士等の補助者として常時法第2条第3項に規定する業務に従事する者は「所属税理士」として登録することになり、他の税理士等の事務所に所属しながら他人の求めに応じて自身の税理士の業務も行う税理士は「開業税理士」として登録することとする。
【改正案】
(登録事項)
規則第8条 法第18条に規定する財務省令で定めるところにより登録を受けなければならない事項は、次に掲げる事項とする。
一 |
略 |
二 |
次のイからハまでに掲げる場合の区分に応じ、それぞれイからハまでに定める事項 |
|
イ |
税理士法人の社員となる場合 税理士法人又は設立しようとする税理士法人の名称及び所属事務所(当該事務所が従たる事務所である場合には、主たる事務所を含む。ロにおいて同じ。)の所在地 |
|
ロ |
法第2条第3項の規定により税理士又は税理士法人の補助者として常時同項に規定する業務に従事する者(第16条及び第18条において「所属税理士」という。)となる場合 その従事する税理士事務所の名称及び所在地又は税理士法人の名称及び所属事務所の所在地 |
|
ハ |
イ及びロに掲げる場合以外の場合 設けようとする税理士事務所の名称及び所在地(ただし、法第2条第3項の規定により他の税理士又は税理士法人の補助者として同項に規定する業務にも従事する場合は、その従事する税理士事務所又は税理士法人の事務所の所在地) |
(税務書類等への付記)
規則第16条 法第33条第3項に規定する財務省令で定める事項は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める事項とする。
一 |
税理士法人の社員又はその所属税理士が署名押印する場合 当該税理士法人の名称 |
二 |
税理士の所属税理士が署名押印する場合 当該税理士の税理士事務所の名称 |
三 |
前2号以外の税理士が他の税理士又は税理士法人の補助者として署名押印する場合 当該他の税理士の税理士事務所又は税理士法人の名称 |
2 略
(事務所を設けてはならない者)
規則第18条 法第40条第1項に規定する財務省令で定める者は、所属税理士とする。
(税理士又は税理士法人の補助者)
基本通達2−7 削除(以下を変更。「法第2条第3項に規定する「補助者」とは、規則第8条第2号ロに規定する補助税理士をいうものとする。」)
(補助税理士である旨の表示)
基本通達33−1 削除(以下を変更。「法第33条の規定により、税理士が署名押印するときに、税理士である旨を付記するに当たって、当該税理士が補助税理士である場合には、補助税理士である旨を表示するものとする。」)
(3)法第30条の税務代理権限証書の提出を前提とした書面添付制度・意見聴取制度
【改正の方向性】
- 法第33条の2第1項の書面添付制度について、第30条の税務代理権限証書の提出を前提条件としたうえで、その効果として、税務調査の通知を納税者ではなく税理士に対してすることとする。
- 書面添付制度の実効性を担保するため、第35条第4項を削除するとともに、税務調査の法的性質について、税務官公署職員の質問検査権との関係を明確化するものとする。
【理 由】
法第33条の2に規定する書面添付制度は、申告内容を明瞭にすることで税務行政の円滑化に資するものであり、添付書面や意見聴取によって疑義が解消され、税務調査が減少することは、納税者の利益にも繋がる。したがって、制度の普及を促すためにも、その利便性をより高める必要がある。
一方、税務代理権限証書については、法第30条において、税務代理をする際の提出が義務付けられているにもかかわらず、必ずしもそれが果たされていないことから、これを徹底しなければならない。
両者を結びつけることで、税理士等の代理権限がより明確なものとなる。そして、上記の二つの書面を提出した税理士等は、税務当局に対する納税者の窓口の役割を果たす者であることが明らかであるから、意見聴取後に税務調査をすることとなった場合、その通知は、当該税理士等に対してなされるべきである。
しかし、第35条第4項の規定により、同条第1項から第3項までの規定が遵守されなかったとしても、その後の処分等の効力には影響しないこととされており、上記の改正が行われただけでは、その意義は希薄なものといわざるを得ない。したがって、同条第4項を削除し、税理士等の固有の権利とされる書面添付制度の実効性を担保するべきである。
【改正案】
(計算書項、審査事項等を記載した書面の添付)
第33条の2 税理士又は税理士法人は、国税通則法第16条第1項第1号に掲げる申告納税方式又は地方税法第1条第1項第8号若しくは第11号に掲げる申告納付若しくは申告納入の方法による租税の課税標準等を記載した申告書を作成し、かつ、当該租税に関し第30条の規定による書面を提出しているときは、当該申告書の作成に関し、計算し、整理し、又は相談に応じた事項を財務省令で定めるところにより記載した書面を当該申告書に添付することができる。 |
2 |
税理士又は税理士法人は、前項に規定する租税の課税標準等を記載した申告書で他人の作成したものにつき相談を受けてこれを審査した場合において、当該申告書が当該租税に関する法令の規定に従って作成されていると認められ、かつ、当該租税に関し第30条の規定による書面を提出しているときは、その審査した事項及び当該申告書が当該法令の規定に従って作成されている旨を財務省令で定めるところにより記載した書面を当該申告書に添付することができる。 |
3 |
略 |
(意見の聴取)
第35条 税務官公署の当該職員は、第33条の2第1項又は第2項に規定する書面(以下この項及び次項において「添付書面」という。)が添付されている申告書を提出した者について、当該申告書に係る租税に関しあらかじめその者に日時場所を通知してその帳簿書類を調査する(以下を削る。「場合において、当該租税に関し第30条の規定による書面を提出している税理士がある」)ときは、当該通知に代えて、当該添付書面を添付した税理士に対し、当該添付書面に記載された事項に関し意見を述べる機会を与えたうえ、調査の日時場所を通知しなければならない。 |
2 |
略 |
3 |
略 |
4 |
削除(以下を変更。「前3項の規定による措置の有無は、これらの規定に規定する調査に係る処分、更正又は不服申立てについての決定若しくは裁決の効力に影響を及ぼすものと解してはならない。」) |
(4)報酬のある公職に就いた場合の税理士業務の停止規定の見直し
【改正の方向性】
- 税理士が報酬のある公職に就いた場合でも、税理士業務の停止をしないこととする。
- 税理士業務の停止をする場合は、その公職に兼業禁止規定がある場合のみとする。
- 法第24条(登録拒否事由)、第51条第2項(通知弁護士の適用除外)との整理を行う。
【理 由】
報酬のある公職に就いた場合の業務の停止規定は、他士業法では、公共・公益活動に積極的に進出し、その職能を活用して健全な運営に貢献することを期待するという理由から弁護士法及び弁理士法においては廃止されており、公認会計士法等においては特段の制限を設けておらず、士業法の中で税理士法にのみ規定されていることから、見直しを行うべきである。
税理士が国民・納税者から高い評価を受け、公職に登用される機会が増えてきている。これは税理士が公職に就き、その職能を活かして広く社会に貢献することが期待されているからであり、多くの税理士が支障なく公職に就くことができる仕組みとすべきである。
また、受け入れる公職側に兼業禁止規定があれば、敢えて税理士法で規定する必要はない。
なお、税理士法上での規制を撤廃した場合、税理士が兼業禁止規定のある公職に就いた際及び離職した際の税理士会への届出を義務付けることで、就任状況を把握し、名義貸し行為等の会則違反を防止することが必要である。
【改正案】
(業務の停止)
法第43条 税理士は、懲戒処分により、弁護士、外国法事務弁護士、公認会計士、弁理士、司法書士、行政書士若しくは社会保険労務士の業務を停止された場合又は不動産鑑定士の鑑定評価等業務を禁止された場合においては、その処分を受けている間、税理士業務を行ってはならない。(以下を削る。「税理士が報酬のある公職に就き、その職にある間においても、また同様とする。」)
(登録拒否事由)
法第24条 次の各号のいずれかに該当する者は、税理士の登録を受けることができない。
一 |
略 |
二 |
削除(以下を変更。「報酬のある公職「国会又は地方公共団体の議会の議員の職及び非常勤の職を除く。以下同じ。」についている者」) |
三〜七 略 |
(税理士業務を行う弁護士等)
法第51条 弁護士は、所属弁護士会を経て、国税局長に通知することにより、その国税局の管轄区域内において、随時、税理士業務を行うことができる。 |
2 |
前項の規定により税理士業務を行う弁護士は、税理士業務を行う範囲において、第1条、第30条、第31条、第33条から第38条まで、第41条から第41条の3まで、第43条(以下を削る。「前段」、第44条から第46条まで(これらの規定中税理士業務の禁止の処分に関する部分を除く。)、第47条、第48条、第54条及び第55条の規定の適用については、税理士とみなす。この場合において、第33条第3項及び第33条の2第3項中「税理士である旨その他財務省令で定める事項」とあるのは、「第51条第1項の規定による通知をした弁護士である旨及び同条第3項の規定による通知をした弁護士法人の業務として同項の業務を行う場合にはその法人の名称」とする。 |
3・4 略 |
- このほか、会則等を整備し、税理士会への公職就任の届出制を設ける。
2.税理士の資格取得に関する規定
(1)税理士の資格
【改正の方向性】
- 税理士となる資格を有する者は、税理士試験に合格した者を原則とする。
- 弁護士・公認会計士(以下隣接職種)という。)に対しては、能力担保措置として、弁護士は会計学に属する科目に、公認会計士は税法に属する科目に合格することを原則とする。
【理 由】
あるべき試験制度
税理士試験は、税理士となるのに必要な学識を有するかを判定することが目的である。すなわち、税理士業務に関連する基礎的学識及び技能の判定を行うとともに、その応用能力の有無を検証するのであるから、その出題は、暗記に頼ったものでないこと、実務を理解する点から行われることが望ましい。この場合、社会人を含めた多くの税理士志望者が受験しやすい試験制度であることが、税理士業界の次世代を担う優秀な人材を確保するためには必要である。
さらに、年金受給者の増加や年末調整の見直し等の議論による納税者数の増加が予想される中、納税者の利便性と安全性を確保し、税理士制度の信頼性を維持していくためには、今後も税理士の人数は適切に確保されなければならない。
隣接職種の資格者等に対する能力担保措置
弁護士は、弁護士法第1条第1項において、「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。」としており、また、公認会計士は、公認会計士法第1条で、「公認会計士は、監査及び会計の専門家として、独立した立場において、財務書類その他の財務に関する情報の信頼性を確保することにより、会社等の公正な事業活動、投資者及び債権者の保護等を図り、もつて国民経済の健全な発展に寄与することを使命とする。」としており、各々重要な使命を持った職業専門家であり、その専門性は異なっている。
司法制度改革による法曹資格者の大幅な増員及び監査の充実・強化の要請により公認会計士の急激な増員が図られているが、これに対して、税理士の資格取得制度については長年にわたり見直しが行われていない。もとより、税理士には税務の専門家としての資質が担保されていなければならないが、他士業制度の改変により急激に増員された他資格者が、無条件で税理士資格を付与され、税理士業務に参画することは問題である。
○ 能力担保措置の必要性
現行制度において税理士資格を有する隣接職種の資格者等は、それぞれの資格における専門家としての資質の検証は行われているが、それをもって、税務に関する専門家としての資質の検証が十分であるとはいえない。
国民・納税者の利便性や安全性の確保の観点からは、原則として、税理士試験合格者に付与されるべき税理士業務を行うのに必要な専門知識や能力を有することを個別に検証し、免除認定する必要がある。
したがって、隣接職種の資格者等に対しては、資格に応じた試験科目免除による能力担保措置を講じたうえで参入を認めていくことが必要である。
なお、隣接職種の資格者等に対する能力担保措置として、例えば、次のようにすべきと考える。
○ 弁護士
法律事務に関する専門家として、租税に関する法令等についても一定の学識及び応用能力を有していると思料されることから、税法に属する科目は免除する。
ただし、税理士は、財務書類の作成等財務に関する事務を業務として行うことができる(法2)と定められているほか、会計参与の有資格者でもあり、相当な会計知識は必須である。したがって、税理士になる弁護士については、会計学に属する科目のうち少なくとも1科目の合格が必要である。
○ 公認会計士
会計に関する専門家として、会計学に属する科目は免除する。
公認会計士試験において必修科目である「租税法」の試験は、監査証明業務を行うために必要な租税に関する法律関係等についての一般的な理解力の検証を目的として出題されており、税務に関する専門家としての十分な資質検証がなされているとはいえない。したがって、税理士になる公認会計士については、税法に属する科目のうち税理士試験において必須科目である所得税法又は法人税法のいずれか1科目の合格が必要である。
○ 税務官公署等行政実務経験者
税務官公署等行政実務経験者に対する試験科目の一部免除規定については、税理士としての能力を担保する観点から、国税審議会による指定研修制度が設けられており、その研修内容をより一層充実させること及び運営の透明性を確保することにより、税理士として必要な資質の検証を図っていくこととする。
○ 修士学位取得者
修士学位取得者については、現行の規定どおりとする。
【改正案】
(税理士の資格)
第3条 次の各号のいずれかに該当する者は、税理士となる資格を有する。ただし、(以下を削る。「第1号又は第2号に該当するものについては、」)租税に関する事務又は会計に関する事務で政令で定めるものに従事した期間が通算して2年以上あること又は日本税理士会連合会が行う実務修習を終了していること(※後述)を必要とする。 |
一 |
税理士試験に合格した者 |
二 |
第6条に定める試験科目の全部について、第7条又は第8条の規定により税理士試験を免除された者
(以下を削る) |
三 |
弁護士(弁護士となる資格を有する者を含む。) |
四 |
公認会計士(公認会計士となる資格を有する者を含む。) |
2 |
公認会計士法(昭和23年法律第103号)第16条の2第1項の規定により同法第2条に規定する業務を行うことができる者は、この法律の規定の適用については、公認会計士とみなす。
|
第8条 次の各号のいずれかに該当する者に対しては、その申請により、税理士試験において当該各号に掲げる科目の試験を免除する。 |
一 |
略 |
二 |
略 |
三 |
弁護士については、税法に属する科目のほか、税理士試験において会計学に属する科目のいずれか1科目について政令で定める基準以上の成績を得た場合には、試験科目のうちの当該1科目以外の会計学に属する科目 |
四 |
公認会計士については、会計学に属する科目のほか、税理士試験において税法に属する科目のうち所得税法又は法人税法のいずれか1科目について政令で定める基準以上の成績を得た場合には、試験科目のうちの当該1科目以外の税法に属する科目 |
五 |
公認会計士法第3条に規定する公認会計士試験に合格した者又は同法第10条第2項の規定により公認会計士試験の論文式による試験において会計学の科目について公認会計士・監査審査会が相当と認める成績を得た者については、会計学に属する科目 |
六〜十二 略 |
2 略 |
(2)実務修習制度の創設
【改正の方向性】
【理 由】
税理士試験受験者が受験勉強に集中できるようにする観点から、実務経験のない若年者層等の人達が、試験合格後速やかに実務に就ける制度が望まれる。
そこで、税理士試験合格者及び試験免除者のうち、実務経験のない者については、実務経験に代わるものとして実務修習制度を創設し、実務修習修了者は資格取得要件を満たすものとする。実務修習は日本税理士会連合会が主催するものとする。
なお、実務修習は、所得税、法人税、消費税、相続税の申告書が作成できるほか、税法の手続規定事務ができる程度の内容とする。
【改正案】
※(1)税理士の資格の項の第3条第1項ただし書を参照。
(3)受験資格要件の廃止
【改正の方向性】
- 受験資格は削除する。このことにより、受験生の大幅な増加が予想されるので、その対応策については検討する必要がある。
【理 由】
税理士業務に関連する基礎的学識又は技能の判定を税理士試験において行うことで、現在の学歴等による受験資格を廃止すべきである。これにより、幅広い層から受験者を確保でき、その結果、税理士資格を付与するに相応しい合格者の資質を維持し、ひいては国民・納税者の期待に添うことに繋がる。
【改正案】
(受験資格)
第5条 削除(以下を変更。「次の各号のいずれかに該当する者は、税理士試験を受けることができる。一〜五及び2〜4 略」)
(4)試験科目の整理
【改正の方向性】
- 税理士試験制度は、その位置付けを申告納税制度との関連を明確にして、その対象試験科目を見直し、実質的な資質向上を目指すこととすべきである。
【理 由】
申告納税制度を基本とする税理士業務にそぐわない試験科目(例えば、酒税法、地方税法のうち固定資産税に関する部分)は、見直すべきである。
【改正案】
(試験の目的及び試験科目)
第6条 税理士試験は、税理士となるのに必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定することを目的とし、次に定める科目について行う。 |
一 |
次に掲げる科目(イからホまでに掲げる科目にあっては、国税通則法その他の法律に定める当該科目に関連する事項を含む。以下「税法に属する科目」という。)のうち受験者の選択する3科目。ただし、イ又はロに掲げる科目のいずれか1科目は、必ず選択しなければならないものとする。 |
|
イ |
所得税法 |
|
ロ |
法人税法 |
|
ハ |
相続税法 |
|
二 |
消費税法(以下、削る。「又は酒税法のいずれか1科目」 |
|
ホ |
国税徴収法 |
|
ヘ |
地方税法のうち道府県民税(都民税を含む。)及び市町村民税(特別区民税を含む。)に関する部分又は地方税法のうち事業税に関する部分のいずれか1科目「以下、削る。「ト 地方税のうち固定資産税に関する部分」」 |
二 |
略 |
3.税理士の信頼性の確保に関する規定
「税理士の信頼性の確保」は、前回の改正において、両院で附帯決議され、資格制度の根幹である資質の向上という観点から、研修の受講を強化する議決がなされた。これに基づき税理士の研修制度の一層の充実を図ってきたところであるが、これを更に強化する方向で検討することが必要である。
また、税務支援のうち、経済的弱者に対する税務援助については、公共性の高い職責を担う税理士の社会的責務の履行と考え義務化する必要がある。
(1)研修受講の義務化
【改正の方向性】
【理 由】
税理士を取り巻く環境は急速に変化しており、税務の専門家として、委嘱者からの信頼に応え、その責任を果たし、広く国民・納税者のニーズにも的確に対応していくためには、最新の知識や技術・能力を保持しなければならない。
平成13年の法改正における衆議院財務金融委員会及び参議院財政金融委員会の附帯決議で、「税理士の資質の維持向上のため、研修制度の一層の充実を図ることが必要である。」という指摘を受けており、研修受講の努力義務を課してきた現行制度について、一層の充実を図り税理士の信頼性を確保するためには、研修の受講を義務化する必要がある。また、病気療養等の相当な理由を有する者に対する減免措置を講じるものとする。
研修の受講を義務化するに当たり、受講時間数の設定については、多くの会員が通常の税理士の業務を行いながら十分に達成可能なものとし、研修形態や内容については、集合研修のほか、日本税務研究センター通信ゼミ等の受講やCD・DVD・ネット配信を視聴することを含むものとするなど、受講機会の拡大を図っていくことが検討されねばならない。
なお、研修内容・研修時間などの実施及びその細目については、会則等で定めるものとする。
【改正案】
(研修)
第39条の2 税理士は、その資質の向上を図るため、所属税理士会及び日本税理士会連合会が行う研修を受け(以下を削る。「、その資質の向上を図るように努め」)なければならない。
(2)税務支援のうち税務援助への従事義務
【改正の方向性】
【理 由】
税理士会は、会則の規定により、会員に税務支援への従事義務を課し、積極的に納税者の税務対応を支援している。「税務支援」は、経済的弱者に対する「税務援助」と、すべての納税者の納税義務が適正に実現できるよう、税理士の社会貢献として、税務援助対象者以外の納税者で原則として税理士等の関与がない者に対し「税務指導」を実施し、納税者の利便性の向上に資するとともに、税理士制度の維持・発展を図る施策である。
税理士業務は、たとえ無償であっても、税理士でない者がこれを行うことができないことから、税理士の社会的責務として、経済的弱者に対する税務援助を会則に定めることが法定されている。このような税務援助規定の趣旨からすると、税理士が税務援助に従事することを義務化すべきである。なお、社会貢献としての税務指導は、社会貢献とする範囲が広いため税理士の従事義務は、従来どおり会則等で定めるものとする。
税理士法において税務援助を義務化するに当たっては、会則上の義務にとどまる税務指導とは、対象者の選定を含めた一切の内容について、これまで以上に明確な区分が必要となる。また、病気療養等の相当な理由を有する者に対する減免措置を講じるものとする。
【改正案】
(税務援助)
第39条の3 税理士は、所属税理士会及び日本税理士会連合会が定めるところにより、委嘱者の経済的理由により無償又は著しく低い報酬で行う税理士業務に従事しなければならない。
(3)税理士証票の更新義務
【改正の方向性】
- 証票の更新制度を創設する。
- 更新要件は、研修の受講、税務援助への従事、会費の完納等とする。
【理 由】
税理士が、国民・納税者に信頼され、不測の損害を与えないためにも、税理士登録している事実を証する税理士証票は、一見して本人を識別できるものでなければならない。
そこで、税理士証票の更新制度を創設し、欠格事項の有無や登録事項等の再確認をするものとする。なお、研修の受講義務、税務援助への従事義務、会費の納入義務等、税理士として最低限に果たさなければならない義務の履行を税理士証票の更新の要件とする。また、税理士証票の更新期間は期間は5年とする。
【改正案】
(税理士証票の更新)
法第27条の2 税理士証票の有効期間は、第22条第3項の規定により交付された目から5年間とし、税理士は、財務省令で定めるところにより、その更新を受けなければならない。
(日本税理士会連合会の会則)
法第49条の14 日本税理士会連合会の会則には、次の事項を記載しなければならない。
一 第49条の2第2項第1号、第3号から第5号まで、第11号及び第12号に掲げる事項
二 税理士の登録に関する規定
三 税理士証票の更新に関する規定
四〜七 略
八 税理士及び税理士法人のすべてを被保険者とする職業賠償責任保険に関する規定(※後述)
2 略
(税理士証票の更新の手続き)
規則第12条の2 税理士は、税理士証票に記載されているその有効期限の2月前までに、税理士証票更新申請書(以下「証票更新申請書」という。)を当該税理士の所属税理士会を経由して、日本税理士会連合会に提出しなければならない。 |
2 |
前項の証票更新申請書には、第11条第2項第1号、第4号、第5号及び第7号に規定する書類等を添付しなければならない。 |
3 |
証票更新申請書は、目本税理士会連合会が定める様式による。 |
(注)証票更新の場合における規則第11条第2項第7号の「前号までに掲げる書類等のほか日本税理士会連合会が必要があると認めたもの」とは次の書類をいう。
イ 所属税理士会が発行する研修受講証明書又は研修受講免除証明書
ロ 所属税理士会が発行する税務援助従事証明書又は税務援助従事免除証明書
ハ 所属税理士会が発行する会費納付証明書又は会費免除証明書
(4)税理士職業賠償責任保険への加入義務
【改正の方向性】
- 日本税理士会連合会の税理士職業賠償責任保険への加入義務化規定を創設する。
【理 由】
現行の税理士職業賠償責任保険は任意加入であるが、日本税理士会連合会に税理士および税理士法人のすべてを被保険者とする職業賠償責任保険への加入を義務付けることは、国民・納税者の安心と安全性を保証することに繋がり、税理士の社会的信頼性の向上に寄与するものである。なお、高額の損害賠償請求に備える目的での任意加入保険も存置し、強制保険と任意保険の2階建てとする。
【改正案】
※(3)税理士証票の更新義務の項の法第49条の14第1項第8号を参照。
4.その他の規定
(1)財務大臣の総会決議取消権の廃止
【改正の方向性】
- 財務大臣の税理士会及び日本税理士会連合会の総会決議取消権は廃止する。
【理 由】
税理士は、法第1条の規定に基づき、納税義務の適正な実現を図ることを使命としている。このことは、国民・納税者から信頼されるのは勿論のこと、税務行政当局からも信頼されるものでなければならないことを意味する。
現状においては、税理士会及び日本税理士会連合会と税務行政当局とは、法の要請に従って、それぞれの立場で納税義務の適正な実現に努めており、両者の間には十分な信頼関係が構築されている。
ところで、法第49条の17は、税理士会又は日本税理士会連合会の総会決議が、「法令又は会則に違反し、その他公益を害するとき」に限って適用されるものであるが、特別法人として法令又は会則に準拠して会務を運営している現状からみて、適用される可能性は極めて少ないといえる。
また、仮に、公益を害する決議に至る可能性があるとしても、法第49条の19(一般的監督)の適用により十分に抑止できると考えられる。
したがって、税理士会及び日本税理士会連合会と税務行政当局との間に信頼関係がある以上、不必要な規定であるといえる。
【改正案】
(総会の決議の取消し)
第49条の17 削除(以下を変更。「財務大臣は、税理士会又は日本税理士会連合会の総会の決議が法令又はその税理士会若しくは日本税理士会連合会の会則に違反し、その他公益を害するときは、その決議を取り消すべきことを命ずることができる。」)
(2)通知弁護士等の公示等
【改正の方向性】
- 通知弁護士等の公示制度と日本税理士会連合会への通知制度を創設する。
【理 由】
弁護士法は第3条第2項において、「弁護士は、当然、弁理士及び税理士の事務を行うことができる。」としている。
本来、税理士としてその業務を行うためには、弁護士であっても、税理士登録をして税理士会に入会することが原則であるが、前記弁護士法との調整を図るうえで、法第51条において、弁護士及び弁護士法人は、国税局長に通知することにより、税理士業務を行うことができることとなっている。しかし、この制度においては、国民・納税者にとっては可視性が欠如し、税理士業務を行いうる弁護士等であるか否かが判断できない。
したがって、通知弁護士等について、国税庁長官による官報等への公示及び日本税理士会連合会への通知義務規定を設けるべきである。
【改正案】
(税理士業務を行う弁護士等)
第51条 弁護士は、所属弁護士会を経て、国税庁長官及び国税局長に通知することにより、その国税局の管轄区域内において、随時、税理士業務を行うことができる。 |
2 |
前項の規定により税理士業務を行う弁護士は、税理士業務を行う範囲において、第1条、第30条、第31条、第33条から第38条まで、第41条から第41条の3まで、第43条(以下を削る。「前段」)、第44条から第46条まで(これらの規定中税理士業務の禁止の処分に関する部分を除く。)、第47条、第48条、第54条及び第55条の規定の適用については、税理士とみなす。この場合において、第33条第3項及び第33条の2第3項中「税理士である旨その他財務省令で定める事項」とあるのは、「第51条第1項の規定による通知をした弁護士である旨及び同条第3項の規定による通知をした弁護士法人の業務として同項の業務を行う場合にはその法人の名称」とする。 |
3 |
弁護士法人(弁護士法に規定する社員の全員が、第1項の規定により国税庁長官及び国税局長に通知している法人に限る。)は、所属弁護士会を経て、国税庁長官及び国税局長に通知することにより、その国税局の管轄区域内において、随時、税理士業務を行うことができる。 |
4 |
前項の規定により税理士業務を行う弁護士法人は、税理士業務を行う範囲において、第33条、第33条の2、第48条の16(第39条の規定を準用する部分を除く。)、第48条の20(税理士法人に対する解散の命令に関する部分を除く。)、第54条及び第55条の規定の適用については、税理士法人とみなす。 |
5 |
国税庁長官は、第1項又は第3校の通知を受けたときは、官報をもって公告し、かつ、日本税理士会連合会に対し、書面によりその旨を通知しなければならない。 |
※参考 会員から寄せられた意見について
今回の「税理士法改正に関する意見」の作成に当たっては、平成21年11月25日にとりまとめたPTタタキ台を基盤とし、これに対する会員の意見を参考に、一部修正等を加えた。項目別の意見の傾向については、概ね以下のとおりである。
○改正要望項目
1.税理士の業務に関する規定
(1)電子申告等の送信業務
PTタタキ台意見に対し、賛成する意見(条件付賛成も含む。)が多くあった。税務代理ではなく、同項第2号の「税務書類の作成」の一環とすべきであるとの意見もあったが、基本的には、税理士業務であることを明記すべきとするものが大勢であった。
このほか、「改正せずとも税理士業務に含まれると解釈可能である」、「申告データの作成と送信は必ずしも連続した業務ではない」、「対外的には、職域防衛としか映らないのではないか」等の意見もあった。
(2)補助税理士制度のあり方
PTタタキ台意見に対し、賛成する意見(条件付賛成も含む。)、「平成13年改正前の制度に戻すべきである」等多くの意見があった。また、補助税理士の呼称を「専従税理士」へ変更することについては、「「専従」も差別的である」等の意見があった。
この他、「補助者としての勤務先を1箇所に限定すべきではない」、「他の税理士の補助者となる者を登録上区分すること自体が不要である」等の意見もあった。
(3)報酬のある公職に就いた場合の税理士業務の停止規定の見直し
PTタタキ台意見に対し、賛成する意見(条件付賛成も含む。)が多かった。
このほか、「ニセ税理士行為の温床となる」等の意見もあった。
2.税理士の資格取得に関する規定
(1)税理士の資格
弁護士及び公認会計士に対する能力担保措置については、PTタタキ台意見に対し、賛成する意見、さらに制限を強化すべきである旨の意見等多くの意見があった。
次に、税務官公署等行政実務経験者に対する能力担保措置については、会計学科目の免除の要件とされる「指定研修」について、研修内容の充実及び運営の透明化を促進させる旨のPTタタキ台意見に対し、賛成する意見のほか、「弁護士・公認会計士と同様に科目合格を要件とすべきである」等の意見もあった。
さらに、修士学位取得者に対する能力担保措置については、現行どおりとするPTタタキ台意見に対し、賛成する意見のほか、「学位取得による免除科目を1科目に限定すべきである」、「必須合格科目を設定すべきである」等の意見もあった。
このほか、「すべての科目免除・自動資格付与を廃止すべきである」、「安易な合格者増は避けるべきである」等の意見もあった。
(2)実務修習制度の創設
PTタタキ台意見に対し、賛成する意見のほか、「修習内容を強化することを条件とすべきである」とする意見や、「実務経験は必須である」とする意見もあった。
(3)受験資格要件の廃止
PTタタキ台意見に対し、一次試験による能力検証等を条件とするものも含め、賛成する意見が多かったが、「知識だけあればよいというものではない」等の意見もあった。
(4)試験科目の整理
PTタタキ台意見に対し、賛成する意見(条件付賛成も含む。)が多かった。
この他、「税理士はすべての税目に精通している必要があり、申告納税制度のみを強調するべきではない」、「合格した科目についてのみ業務を行えることとするべきである」等の意見もあった。
3.税理士の信頼性の確保に関する規定
(1)研修受講の義務化
PTタタキ台意見に対し、「資格者であれば研修を受講するのは当然である」として賛成する意見も多かったが、「強制により実現すべきものではない」、「研修体制が不十分であり、多くの会員にとって達成が困難である」等の意見もあった。
(2)税務支援のうち税務援助への従事義務
PTタタキ台意見に対し、「会則で義務化すべきである」との意見も含め、賛成する意見が多かったが、「会員の理解と納得の下に自発的に行われるべきである」、「本来課税当局が行うべきものである」等の意見もあった。
(3)税理士証票の更新義務
PTタタキ台意見に対し、賛成する意見(条件付賛成も含む。)が多かったが、「登録時に税理士としての適格性を確認されているので、研修受講等を要件とする必要はない」、「一定期間ごとの更新により多大な費用と事務負担が生じる」等の意見も多かった。
(4)税理士職業賠償責任保険への加入義務
PTタタキ台意見に対し、賛成する意見だけでなく、「小規模案件しか扱わない税理士には不要である」、「義務化により、かえって納税者からの信頼が損なわれるおそれがある」等の意見もあった。
このほか、「事務所の規模により保険料を差別化してほしい」等の意見もあった。
4.その他の規定
(1)財務大臣の総会決議取消権の廃止
PTタタキ台意見に対し、賛成する意見(条件付賛成も含む。)が大勢を占めた。
このほか、「他士業にも同様の規定がある」、「税理士が課税庁と納税者の調整的立場にある以上やむを得ない」等の意見もあった。
(2)通知弁護士等の公示等
PTタタキ台意見に対し、賛成する意見(条件付賛成も含む。)が大勢を占めた。
この他、「弁護士法の規定からして通知は不要である」、「通知弁護士制度自体を廃止すべきである」等の意見もあった。
○検討を要する項目
(1)財務書類の作成等
法第2条第2項の「税理士業務に付随して」の文言を削るべきであるとの意見のほか、「隣接士業との間で火種になるおそれがある」、「財務書類の作成等は税理士の独占業務ではないことから当該文言は必要である」等の意見もあった。
(2)法第30条に基づく書面添付制度・意見聴取制度
税理士の権利として明確化するべきであるとの意見のほか、「書面添付制度自体が納税者を代理する立場と矛盾する」、「税理士の権利として明確化することにより、書面添付の義務化に向かうことを不安視している」等の意見もあった。
上記のほか、PTタタキ台で取り上げなかった項目についても、意見が寄せられた。今後の税理士法改正に関する検討の参考に資するため、意見のあった項目のうち主なものを以下に記載しておく。
- 納税者の権利擁護
- 税理士試験の二段階選抜方式
- 本人訴訟への出廷
- 補佐人の尋問権
- 税理士法人の指定社員無限責任制度
- 一人税理士法人制度
- 印紙税の対象税目への追加
- 税理士の代理権の法的整備
- 資格取得の経緯の納税者への明示
- 登録拒否事由の見直し
- 税理士事務所のあり方
- 罰則の強化
- 日税連又は税理士会の懲戒権
- 日本税理士会連合会を日本税理士連合会に変更
- 臨税制度の見直し
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