資料

税務運営方針 昭和51年4月1日 国税庁


目 次
第一 総論
1 税務運営の基本的考え方
(1)納税者が自ら進んで適正な申告と納税を行うような態勢にすること
(2)適正な課税の実現に努力すること
(3)綱紀を正し、明るく、能率的な職場をつくること
2 事務運営に当っての共通の重要事項
(1)調査と指導の一体化
(2)広報活動の積極化
(3)税務相談活動の充実
(4)納税者に対する応接
(5)不服申立事案の適正かつ迅速な処理
(6)部内相互の連絡の緊密化
(7)地方公共団体及び関係民間団体との協調
(8)電子計算組織の利用と事務合理化の推進
3 組織管理と職場のあり方
(1)庁局署の関係
(2)適正な事務管理と職員の心構え
(3)職員の教育訓練
(4)綱紀の粛正
(5)職場秩序の維持
(6)職場環境の整備
(7)職員の健康管理
第二 各論
1 直税関係
(1)直税事務運営の目標と共通の重点施策
(2)各事務の重点事項
2 調査査察関係
(1)調査課事務運営の目標と重点事項
(2)査察事務運営の目標と重点事項
3 間税関係
(1)間税事務運営の目標と共通の重点施策
(2)各事務の重点事項
4 徴収関係
(1)徴収事務運営の目標と共通の重点施策
(2)各事務の重点事項
5 不服申立て関係
(1)異議申立て関係
(2)審査請求関係


税務運営方針

第一 総論

1 税務運営の基本的考え方

 租税は、国民が生活を営んでいく上で必要な公共的経費に充てるため、各自が負担するものである。
 税務行政の使命は、税法を適正に執行し、租税収入を円滑に確保することにあるが、申告納税制度の下における税務行政運営の課題は、納税者のすべてがこのような租税の意義を認識し、適正な申告と納税を行うことにより、自主的に納税義務を遂行するようにすることである。税務運営においては、この課題の達成を究極の目標として、その基盤を着実に築き上げていくことを、その基本としなければならない。
 このような理念に立って、税務運営の基本的考え方を示すと、次のとおりである。

(1)納税者が自ら進んで適正な申告と納税を行うような態勢にすること
……近づきやすい税務署にすること……

 納税者が自ら進んで適正な申告と納税を行うようになるには、納税者が租税の意義を理解し、その義務を自覚するとともに、税法を理解し、正しい計算のために記帳方法などの知識を持つことが必要である。このため、広報、説明会、税務相談などを通じて、納税についての理解を深め、税法等の知識を普及するとともに、記帳慣習を育成することに努める。特に課税標準の調査に当っては、事実関係を的確には握し、納税者の誤りを是正しなければならないことはもちろんであるが、単にそれにとどまらないで、それを契機に、納税者が税務知識を深め、更に進んで納税意識をも高めるように努めなければならない。

 このように、申告納税制度の下では、納税者自らが積極的に納税義務を遂行することが必要であるが、そのためには、税務当局が納税者を援助し、指導することが必要であり、我々は、常に納税者と一体となって税務を運営していく心掛けを持たなければならない。

 また、納税者と一体となって税務を運営していくには、税務官庁を納税者にとって近づきやすいところにしなければならない。そのためには、納税者に対して親切な態度で接し、不便を掛けないように努めるとともに、納税者の苦情あるいは不満は積極的に解決するよう努めなければならない。また、納税者の主張に十分耳を傾け、いやしくも一方的であるという批判を受けることがないよう、細心の注意を払わなければならない。

(2)適正な課税の実現に努力すること

 国民の納税道義を高め、適正な自主申告と納税を期待するには、同じような立場にある納税者はすべて同じように適正に納税義務を果すということの保証が必要である。このため、申告が適正でない納税者については、的確な調査を行って確実にその誤りを是正することに努め、特に悪質な脱税に対しては、厳正な措置をとるものとする。
 なお、このようにして適正な課税を実現することが、また、法の期待する負担の公平を図り、円滑に租税収入を確保するゆえんのものであることを忘れてはならない。

(3)綱紀を正し、明るく、能率的な職場をつくること

 国民の納税道義を高め、税務に対する納税者の信頼と協力をかち得るため、税務における職務の執行は、最も公正でなければならないし、職場における執務態勢は、規律正しく、明るくかつ能率的でなければならない。職員は、各自が国家財政を担っているということを自覚し、職場に誇りを持ち、厳正な態度で自らを律しなければならない。そのことがまた、納税者にとって近づきやすい税務官庁にするゆえんでもある。
 また、すべての職員が自発的かつ積極的に、それぞれの能力を十分に発揮しながら、打ち解けて明るい気持で勤務できる職場をつくるよう、管理者はもちろん、職員の一人一人が努力しなければならない。

2 事務運営に当っての共通の重要事項

(1)調査と指導の一体化

  • イ 申告納税制度の下における税務調査の目的は、すべての納税者が自主的に適正な申告と納税を行うようにするための担保としての役割を果すことにある。すなわち、適正でないと認められる申告については、充実した調査を行ってその誤りを確実に是正し、誠実な納税者との課税の公平を図らなければならない。
     更に、調査は、その調査によってその後は調査をしないでも自主的に適正な申告と納税が期待できるような指導的効果を持つものでなければならない。このためには、事実関係を正しくは握し、申告の誤りを是正することに努めるのはもちろんであるが、それにとどまることなく、調査内容を納税者が納得するように説明し、これを契機に納税者が税務知識を深め、更に進んで将来にわたり適正な申告と納税を続けるように指導していくことに努めなければならない。調査が非違事項の摘出に終始し、このような指導の理念を欠く場合には、納税者の税務に対する姿勢を正すことも、また、将来にわたって適正な自主申告を期待することも困難となり、納税者の不適正な申告、税務調査の必要という悪循環に陥る結果となるであろう。
  • ロ 他方、現状においては、記帳に習熟していないことなどから、自らの力では正しい申告を行うことが困難な納税者が多く、また、問題点を指摘し、又は助言することによって適正な申告が期待できる納税者も少なくない。このような納税者について、何らの指導もしないでその申告を待つことは、自主的に適正な申告ができる納税者を育成していくためにも、また、調査事務を重点的、効率的に運営していく見地からも適当でない。従って、このような納税者については、必要に応じて、記帳、決算、課税標準の計算などについて、個別的又は集団的に指導を行う。
     この場合においても、その納税者の実態を的確には握していないと、効果的な指導をすることは難しい。また、同業者など類似の納税者の経営諸指標との対比で説明しなければ説得力を欠く場合が多い。従って、このような指導を行うに当っても、その納税者の実態をは握し、あるいは、業種別の経営の実態を知るために、必要な調査を的確に行っておくことが肝要である。

(2)広報活動の積極化

  • イ 広報は、申告納税制度の基盤を築き上げていく上で、調査及び指導と並んで重要な意義を持つものである。
     広報のねらいは、このような目的との関連で、納税道義の高揚を図ること税法、簿記会計等税務に関する知識の普及と向上を図ること申告期限、納期限等について、納税者の注意を喚起すること納税者と税務当局との相互の理解を深め、両者の関係の改善を図ること、に大別される。
     広報活動の展開に当っては、そのねらいを明確にし、ねらいに即して対象、テーマ、時機及び媒体などを適切に選ぶことが肝要である。

    (イ)納税道義の高揚をねらいとする広報は、国民一般を対象とし、租税が国の財政にとってどのような意義を持っているか、租税が国民生活にどのように還元されているか、国民の各階層がどのように税を負担しているか、また、これらが諸外国でどうなっているか、などをテーマとし、現代民主主義国家における租税の意義、福祉国家における租税の重要性などに対する国民一般の理解を深めることによって、国民の納税義務に対する自覚を高めることに資する。
     このような広報活動は、庁局署がそれぞれの分野で行うものとするが、特に庁は、各種の資料を局署に提供するほか、テレビ、ラジオ、新聞等の広域的な広報媒体を通じて、全国的な広報活動を行う。
      なお、小学校の児童や中学校・高校の生徒に対して、租税に関する正しい知識を広めることは、納税道義の高揚に寄与するところが大きいので、各種の学校に対し租税教育用教材を提供することに努めるほか、教師の租税及び財政に関する研究の便を図ることにも配意する。

    (ロ)税務に関する知識の普及と向上をねらいとする広報は、納税者の所得などの規模、税務についての知識の程度などに応じて、税法、記帳、税額の計算方法など、実務上必要な知識を平易な表現で提供し、自主的に正しい申告と納税を行える納税者を多くすることに努める。
     このような広報活動は、庁局署がそれぞれ担当するものとし、庁局は、主として、テレビ、ラジオ等を利用する広域的な広報を担当するほか、局署に対し、パンフレットなどの資料を提供する。署は、主として、各種の講習会や説明会を開催し、地域的な広報を行う。
      なお、税務大学校における租税の理論的研究の成果を積極的に発表し、税制の理念、租税の理論についての国民の理解を深めることに努める。

    (ハ)申告期限、納期限等については、庁局署がそれぞれ効果的な時機と効率的な媒体を選び、その周知の徹底を図る。

    (ニ)納税者と税務当局との関係の改善を図る広報としては、納税者にとって近づきやすく、また、納税者に信頼される税務署というイメージをつくることが特に必要である。このため、納税者に税務行政の現状等を紹介して、税務に対する理解を得ることに努めるとともに、特に税務に携わる職員のすべてが自ら広報担当者であるという心掛けを持って、納税者に接するようにしなければならない。
  • ロ 税務の広報は、実施に当って様々な制約が多く、ともすれば消極的な姿勢に陥る傾向がある。従って、庁局署の幹部は、広報のテーマ、発表内容、時機などについて、自ら責任を持って適切な判断を下し、積極的かつ効果的な広報を行うことに努める。
  • ハ 広報活動を行うに当っては、税理士会、日本税務協会、青色申告会、法人会、間税協力会、納税貯蓄組合、商工会議所、商工会等の関係民間団体の協力を得るように努める。

(3)税務相談活動の充実

 納税者が自ら積極的に納税義務を遂行するためには、納税者が気軽に相談できるような税務相談体制を整備することによって、納税者を援助することが大切である。このため、テレホンサービスの拡充、地区派遣相談官制度の増設等国税局税務相談室の機能を一層充実し、併せて税の相談日による面接相談の活用を図るとともに、税理士会等関係民間団体が行う税務相談との緊密な連携に配意する。

  • イ 税務相談に当っては、正確で適切な回答をするとともに、納税者の有利となる点を進んで説明し、納税者に信頼感と親近感を持たれるように努める。また、苦情事案については、納税者が苦情を申立てざるを得ないこととなった事情を考え、迅速、適切に処理する。
  • ロ 税務相談室においては、それぞれの実情に応じて最も効果的な方法で相談事務の一層の充実を図るとともに、苦情事案については、特に優先的に処理するよう配慮する。
  • ハ 税務署における税務相談については、「税の相談日」のあり方に更に一段と工夫を凝らし、納税者の利用の便に配慮する。
     また、苦情事案については、幹部職員がこれに当り、積極的に解決に努める。

(4)納税者に対する応接

  • イ 税務という仕事の性質上、納税者は、税務官庁をともすれば敷居の高いところと考えがちであるから、税務に従事する者としては、納税者のこのような心理をよく理解して、納税者に接することが必要である。
     このため、税務署の案内や面接の施設の改善に努め、納税者が気楽に税務相談に来ることができるよう配慮するとともに、窓口事務については、納税者を迎えるという気持になって、一層の改善に努める。また、国税局の税務相談室及び税の相談日がより一層利用されるようにする。
      なお、納税者に来署を求めたり、資料の提出を求めたりする場合においても、できるだけ納税者に迷惑を掛けないように注意する。
  • ロ 納税者の主張には十分耳を傾けるとともに、法令や通達の内容等は分かりやすく説明し、また、納税者の利益となる事項を進んで知らせる心構えが大切である。
  • ハ 税務行政に対する苦情あるいは批判については、職員のすべてが常に注意を払い、改めるべきものは速やかに改めるとともに、説明や回答を必要とする場合には、直ちに適切な説明や回答を行うよう配慮する。

(5)不服申立事案の適正かつ迅速な処理

  • イ 不服申立ての処理に当っては、原処分にとらわれることなく、謙虚に納税者の主張に耳を傾け、公正な立場で適切な調査を行い、事実関係の正しいは握、法令の正しい解釈適用に努めるとともに、事案の早期処理を図り、納税者の正当な権利、利益の保護に欠けることのないように配慮する。
     特に、国税不服審判所においては、それが税務行政部内における第三者的機関として設けられている制度的趣旨に顧み、その運用に当っては、総額主義に偏することなく、争点主義の精神を生かしながら、充実した合議を行い、権利救済の十全を期する。
  • ロ 不服申立事案の適正、円滑な処理を通じて反省を行い、税務行政の改善に努める。
     また、広報活動を活発に行って、納税者のための権利救済制度の周知に努める。

(6)部内相互の連絡の緊密化

 経済取引の多様化、広域化等につれ、税務部内における横の連絡を緊密にすることがますます必要となっている。横の連絡が十分でないと、仕事にそごを来し、事務処理の遅延、課税漏れ、徴収漏れ等を来す原因となり、また、納税者に迷惑を掛け、税務の信用を失うことにもなる。
 従って、事務計画の作成に当っては、関係部門と十分な連携をとるとともに、個々の事務処理に当って、各自が常に関係部門との連絡に配意することが必要である。また、幹部会、賦課徴収連絡会議等の会議を効果的に運営し、関係部門間の緊密な連絡に努める。特に、資料及び情報の収集活用、関連調査などについて、関係部門間の積極的な連携を図る。

(7)地方公共団体及び関係民間団体との協調

  • イ 地方公共団体とは、相互に資料・情報の交換を行うなど連絡を密にし、適正な課税の実現に協力するとともに、それぞれの事務が一層効率的に運営されるように努める。
  • ロ 税理士会、日本税務協会、青色申告会、法人会、問税協力会、納税貯蓄組合、商工会議所、商工会等の関係民間団体との協調を図るとともに、これらの団体相互の協力態勢にも十分に配意して、納税者特に小企業者の記帳指導等を積極的に推進する。
  • ハ 税務の公正円滑な運営を期するためには、税務当局と納税者との間において税理士が果す役割は極めて重要である。関係部課は相互に連絡を密にし、税理士業務が適正に運営され、その機能が健全に発揮されるように努めなければならない。

(8)電子計算組織の利用と事務合理化の推進

事務量の増大と取引態様の複雑化等事務内容の高度化に対応して、事務運営の効率化を図るため、電子計算組織の利用と事務の簡素合理化を進める。

  • イ 手作業を機械によって代替し省力効果を生み出すための申告所得税及び法人税の内部事務並びにこれら両税の債権管理事務の電子計算処理等既に実施中の各種システムについては、更に改善合理化に努め、着実に拡大していくこととする。
  • ロ 最近における電子計算組織利用技術の発展にかんがみ、調査、滞納処分等の外部事務を支援するシステム 各段階の管理者ごとに適時適切な情報を提供し、その意思決定を改善するためのシステム 税務行政の長期的な計画の立案を可能ならしめるシステム等電子計算組織を高度に利用するシステムの開発を進めるよう努力する。
  • ハ 庁局の通達を平易で明解なものにするとともに、必要最小限度のものにとどめるほか、既存の通達の整理統合を図る。
  • ニ 事務の簡素、合理化を一層強力に推進するため、引続き事務提要、帳簿様式等に検討を加え、その改善を図るほか、庁局に対する報告、上申事項等の整理統合に努める。また、事務の管理方式、実施の手順等についても、更に検討を加える。

3 組織管理と職場のあリ方

(1)庁局署の関係

  • イ 庁局署は、それぞれの立場に応じてその役割を遂行し、相互に信頼し、一体となって税務の運営に当らなければならない。

    (イ)税務行政は、社会経済の発展、変化に適応していかなければならない。税務行政を取巻く諸条件の現状及び将来の的確な見通しの上に立って、予想される税務行政上の諸問題に対処していくため、定員及び機構、職員の採用及び養成、人事、事務の機械化、施設などについて長期の計画を立案し、着実な遂行に努めることは、庁の重要な任務である。
     局は、管内の社会経済の見通しと庁のこの長期計画の下で、その局において予想される諸問題に対処するため、必要な事項について長期の対策を立て、実施していかなければならない。
     なお、庁局は、税務行政のより一層円滑な運営に資するため、税務行政上の制度、慣行についてその改善に努めることとする。

    (ロ)庁は、税務運営の基本方向を示すとともに、事務運営の重要事項を指示し、局は、これに基づき、その事務の現状及び社会経済の実態に即して、署に対し事務運営の具体的施策を指示する。
     庁局が事務運営について局署に指示する場合には、その基本的な考え方を明確に、かつ、分かりやすく指示し、実施の方法などについては大綱だけを示し、局署が創意と自主性を持って、それぞれの実情に即し最も効率的に事務を遂行できるようにしなければならない。

    (ハ)法令の解釈及び適用を統一することは、税務にとって基本的なことであり、庁あるいは局の重要な任務である。また、税務の行政水準について地域間あるいは事務間の均衡を図ることも、税務にとって重要な課題である。庁及び局は、事務視閲及び調査事績検討会などを通じて、局署及び各事務の行政水準をは握することに努めなければならない。なお、税務の行政水準をより適切には握する方法についても、検討を進めることが必要である。
     地域間及び事務間で税務の行政水準の均衡を図るために重要なことは、定員の配置及び人事などを適切にすることである。庁局は、定員、機構及び人事が、局署及び各事務の実態並びに社会経済の発展、変化に即して常に適切なものとなるようにしなければならない。
  • ロ 庁局が局署を指導するに当っては、計数に表れた事績だけでその事務運営を評価することをしないで、例えば、事務運営が全体として税務運営の基本方向にのっているかどうか 事務計画が局署の実態からみて適切であるかどうか 事務運営に当って管理者の処置が適切かどうか 定員の配置及び人事、予算措置などが適切かどうか 職員各自が積極的意欲を持って仕事に取組んでいるかどうかなど、庁局署が一体となって事務改善の方策を見出すという観点から指導することに努める。
     なお、事務運営における総合性を確保し、責任体制を明確にするため、庁局の局署に対する重要な指示は、局長又は署長を通ずることを原則とする。
  • ハ 庁局は、会議その他の機会において局署の実情や法令通達などについて局署の意見や進言が自由に表明されるよう配慮するとともに、適切な意見は積極的に採り入れ、その実現を図る。
     また、会議等の開催に当っては、マンネリ化した会議等はないか常に見直しを図り、真に必要と認められる会議等に限り開催するように努め、可能な限り会議等の整理縮少を図る。

(2)適正な事務管理と職員の心構え

  • イ 管理者は、職員のすべてがそれぞれの適性を生かしてその能力を十分発揮できるようにするとともに、すべての職員が互いに打ち解け、互いに助合い、明るいふんい気で仕事ができるような職場をつくることに努めなければならない。
     このため、事務運営の方針、計画を決定するのはもとより管理者の職務と責任であるが、管理者は、努めて職員と対話の場を持ち、職員の建設的な意見を事務運営面に採り入れるように努め、職員が参加意識を持って職務に当ることができるよう心掛けなければならない。また、そのような接触を通じて職員の実情をよく理解することに努め、親身になって部下の指導に当ることが大切である。なお、管理者は、常に研さんを積み、識見を広め、管理能力を高め、部下職員の範となるよう努めなければならない。
  • ロ 各職員は、税務運営の基本的な考え方をよく認識し、各自の一つ一つの事務処理が税務運営全体に持つ意義を自覚して、積極的にそれぞれの創意工夫を凝らして職務の遂行に当るようにしなければならない。
     また、税務は高度な専門的知識と経験とを必要とする仕事である。従って、このような事務に従事する職員は、税法の知識及び税務に関する技術的能力の向上に努め、おう盛な責任感を持って、事務処理に当らなければならない。特に、専門官は、このような専門的知識と経験を兼ね備えた職員として、税務の中核的存在であることを認識し、その責任を十分自覚して、その職務の遂行に当らなければならない。
      なお、納税者の税務に対する信頼と協力を得るためには、日々納税者に接する職員が、ただ単に税務の専門家であるだけでなく、人間的にも信頼されることが要請される。従って、職員は、常に常識を豊かにし、品性を高めるよう心掛けなければならない。
  • ハ 特に、署にあっては次の点に留意する必要がある。

    (イ)署長は、管内の納税者の状況、その署の職員の実態等を的確には握するとともに、専門官制度を柱とする署の機構が全体として有機的かつ効率的にその所期の機能を発揮するように努める。更に、その事務運営が税務運営の基本方向に沿って着実に行われるよう、署務の全般を方向付けし調整し、推進するとともに、その結果を的確に見極めていかなければならない。

    (ロ)特別国税調査(徴収)官はその豊富な知識と経験を生かして、自ら積極的に調査、滞納整理等に当ることとし、その執務を通じて専門官全体の模範となることが必要である。

    (ハ)課長及び統括官は、各部門の事務遂行の責任者として署長の意図を体し、適切な計画の下に、部下職員を指揮して、的確な事務運営に努めなければならない。このため、事務の管理に当っては、重複した管理や不必要に細かい管理を行うことによって、管理事務が増大し、職員の自主性が減殺されて、効率的な事務運営が損われることがないように配意しなければならない。また、課長及び統括官は、部下職員の個々の案件の処理が適正に行われるよう、必要な指導と指示を行う。

(3)職員の教育訓練

  • イ 職員の資質の向上を図ることは、税務運営を円滑適正に行うための基礎となるものである。管理者は、日常の事務を通じて職員を指導するとともに、職場研修等を計画的に実施して、職員の職務遂行能力の向上を図るよう努める。
     なお、経験年数の少ない職員に対しては、個別指導を適切に行うよう特に配意する。
  • ロ 税務大学校においては、教育内容の一層の改善合理化を図り、税務行政における諸情勢の推移に即応した各種研修等を計画的に実施して、職員の資質の向上に寄与するよう格別の配慮を行う。管理者に対する監督者研修についても、これを充実して管理者の管理能力の向上を期する。なお、税務大学校における租税理論及び税法の運用に関する研究体制を整備強化することにより、租税理論の研究水準の向上と職員の教育訓練の充実に資する。

(4)綱紀の粛正

 一部の職員の間に起きた不正事件であっても、それは、税務行政全般の信用を傷つけるものである。
 税務行政に携わる職員は、一人一人が公務員としての責任と税務職員としての職務の重要性について、常に自覚を新たにするとともに、誘惑の多い職場であることに顧み、平素から細心の注意を払い、いやしくも不正事件を引起すようなことがあってはならない。
  また、管理者は、部下職員の範として自らを律しなければならないことはもちろん、部下職員に対しては、単に職場における業務上の監督指導を行うだけでなく、職員の身上を常には握するとともに、職場に正しい倫理観を確立して非行の未然防止に努め、万一事件が発生した場合には、機を失することなく所要の措置を講ずるとともに、速やかに実情を調査した上、厳正に処置する。

(5)職場秩序の維持

 職員は、税務職員としての職責を自覚し、国家公務員法等に定める服務規律を遵守して良識ある行動をとるとともに、それぞれの職務に専念し、職場秩序が整然と維持されるよう努めなければならない。管理者は、平素から部下職員の指導訓練を通じて、職員の自覚を高め、職場秩序の確立に努めるとともに、職場の秩序を乱す行為に対しては、厳正な態度をもって臨まなければならない。

(6)職場環境の整備

  • イ 納税者にとって近づきやすい税務署とするためにも、また、職員が明るい気持で能率よく仕事を行うためにも、職場環境の整備が必要である。このため、庁舎の施設、備品等の整備改善に一層の努力を払うとともに、整理整とん、火災盗難の防止その他適正な管理に十分配意する。
  • ロ 住宅事情が職員の勤務意欲に重大な影響を及ぼすことに顧み、宿舎の増設及び質的向上に努め、職員の住居の安定を図る。

(7)職員の健康管理

  • イ 明るく、能率的な職場をつくるには、職員が健康であることが重要である。このため、診療所の医療施設等を充実するとともに、健康管理を適正に実施し、疾病の早期発見と疾患者に対する健康指導の徹底を図り、また、休暇等職員の休養について適切な配意をし、職員の健康の保持増進に万全を期する。
     殊に40歳以上の職員が全職員の約半数を占め、高齢化する傾向にある現在、いわゆる成人病といわれる疾病の早期発見のため、健康診断の充実を期する。
  • ロ 職員の元気を回復し、職員相互の連帯感を高めるため、職員の意向及び事務の繁閑に配意しながら職場におけるレクリエーション活動を活発に実施する。なお、レクリエーション指導者の養成にも一層の努力を払う。また、明るく健康な職場とするための福利厚生施設の拡充に努める。

第二 各論

1 直税関係

(1)直税事務運営の目標と共通の重点施策

 直税事務は、社会の各層にわたる極めて多数の納税者を対象とし、加えて、納税者の生活や業務に直接影響するところが大きい所得又は資産などを課税の対象としていることから、その運営の適否は、単に直税事務にとどまらず、広く税務行政全般に対する信頼感、ひいては国民一般の納税道義に影響を持つものである。
 従って、直税事務を適正に運営し、もって納税者間の負担の公平を図ることは、税務行政全体にとって極めて重要なことである。
 申告納税制度の下における直税事務の目標は、すべての納税者が自ら正しい申告を行うようにすることにある。
 このため、事務の運営に当っては、納税者の税歴、所得又は資産の規模、税額などに応じて、それぞれの納税者に即した調査と指導を一体的に行うことが必要である。
 このような見地から、直税事務の運営に当っては、次の諸点に施策の重点を置く。

  • イ 青色申告者の育成

     自主的に正しい申告のできる納税者を育成するについて、その中核をなすものは青色申告であるから、青色申告者の増加と育成に一層努力する。
     このため税理士会との協調を図りつつ、商工会議所、商工会、青色申告会、法人会等の関係民間団体との連携強化を更に進め、これらの団体の指導を通じて、納税者の記帳慣行の醸成と自主的な申告納税の向上が行われるようにする。
  • ロ 調査の重点化

     限られたか働量で最も効率的な事務運営を行うため、調査は納税者の質的要素を加味した上、高額な者から優先的に、また、悪質な脱漏所得を有すると認められる者及び好況業種等重点業種に属する者から優先的に行うこととする。このため、調査の件数、増差割合等にとらわれることなく、納税者の実態に応じた調査日数を配分するなど、機動的、弾力的業務管理を行うよう留意する。
  • ハ 調査方法等の改善

     税務調査は、その公益的必要性と納税者の私的利益の保護との衡量において社会通念上相当と認められる範囲内で、納税者の理解と協力を得て行うものであることに照らし、一般の調査においては、事前通知の励行に努め、また、現況調査は必要最小限度にとどめ、反面調査は客観的にみてやむを得ないと認められる場合に限って行うこととする。
     なお、納税者との接触に当っては、納税者に当局の考え方を的確に伝達し、無用の心理的負担を掛けないようにするため、納税者に送付する文書の形式、文章等をできるだけ平易、親切なものとする。
      また、納税者に対する来署依頼は、納税者に経済的、心理的な負担を掛けることになるので、みだりに来署を依頼しないよう留意する。
  • ニ 有効な資料・情報の収集とその活用

     資料・情報は、調査対象の選定、調査ポイントの抽出などに役立つことにより、調査事務を効率化するとともに、各税事務を有機的に結び付け、調査の内容を充実するものであるので、その収集に当っては、活用効果が特に大きいと認められるものに重点を置き、調査に当っては、収集した資料・情報を十分活用することに努める。また、この趣旨を生かすよう、その事績についても的確な管理を行う。
  • ホ 納税秩序の維持

     税務調査は、納税者相互間の負担の公平を図るため、国民からの信託を受けてこれを実施するものであり、すべての納税者は、本来その申告の適否について調査を受ける立場にある。従って、各種の妨害行為をもって税務調査を阻む者に対しては、納税秩序を維持し、かつ、課税の適正を期するため、これらの妨害行為に屈することなく、的確な調査を行い、一般納税者との間に、不均衡が生ずることのないよう特段の配意をする。
  • ヘ 事務系統の連携の強化

     直税各税の事務は、経済活動の高度化とともに、ますます密接な関連を持ってきていることに加え、部門制の採用による事務の専門化と統括官の増加により、直税事務を一体的に運営することの必要性がますます高くなってきている。従って、事務の運営に当っては、資料の効率的収集及び活用、同時調査、同行調査、連鎖調査の効果的な実施などにより、所得税、法人税及び資産税の各税事務が、有機的連携の下に行われるよう配意する。
     なお、必要に応じ局署間、事務系統間の応援を積極的に行う。また、直税職員は、納税者の転出入に伴う処理その他徴収部門に対する所要の連絡を迅速確実に行うことはもちろん、徴収部門から賦課交渉があった場合などには、速やかに見直しなど所要の処理を行い、あるいは調査等で知り得た徴収上参考となる事項を確実に徴収部門に連絡するなど、徴収事務との連絡協調に努める。
  • ト 事務管理のあり方

     事務の管理に当っては、重複した管理を行うことにより管理事務の増大を来すことのないよう、効率的な事務管理に努めるほか、次の諸点に配意する。

    (イ)事務計画の策定に当っては、職員、特に上席調査官等経験豊富な者の意見を聴取し、職員の建設的な意見を事務計画に採り入れるよう配意する。

    (ロ)事務の分担の付与に当っては、職員の経験、適性、事案の難易等を総合勘案し、適切な分担付与を行うことに努める。特に上席調査官には重要かつ困難な事案を付与する。

    (ハ)事務の進行管理に当っては、職員の創意工夫を生かすよう、職員の経験、能力、事案の内容等に応じて、それぞれ適切な管理を行うことに努める。

(2)各事務の重点事項

  • イ 資料関係

    (イ)資料の収集については、調査事務との関連において、収集すべき資料の種類及びその収集先に工夫を凝らし、いたずらに収集枚数にとらわれることなく、調査に直結する有効な資料の収集に努める。特に、調査の過程でなければ得られない資料について、収集の徹底を図る。
     また、管理者は、重点調査対象業種の選定に役立つ資料・情報の収集についても、特段の配意をする。

    (ロ)資料の活用については、一枚の資料であっても関連する税目の調査にそれぞれ使用するなど、その多角的な活用に努めるものとする。また、調査は資料を十分に活用することによって深められるものであるから、管理者は、資料が確実に活用されているかどうかについて、徹底した管理を行う。

    (ハ)資料源の開発については、担当者が当るほか、一般の調査、法定資料の監査等の機会を通じて、積極的に有効資料源の開発に努める。

    (ニ)個々の資料・情報が関連して相互にその内容を補完し合い、納税者の実態は握に十分その効果を発揮するよう、資料・情報を長期にわたって蓄積し、継続して管理することに努める。

    (ホ)資料事務の運営に当っては、収集された資料の活用結果をは握し、どのような資料が有効か、また、どのような収集方法が効率的かについて分析を行い、じ後における資料収集事務の改善を図る。
  • ロ 所得税関係

     申告納税制度の趣旨に沿った事務運営を行うため、次の点に配意しつつ事後調査体系の一層の定着に努める。

    (イ)納税者が、自ら課税標準について正しい計算を行い、また、その経営を合理化していくためには、日々の取引を正確に記録する慣習がその前提となる。
     この記帳慣習を育成していくため、青色申告制度はその中核をなすものであるから、今後も引続き、青色申告者の増加に積極的に努力するとともに、適切な指導又は調査を通じて、青色申告者の質的水準の同上を図る。
     なお、その普及及び指導については、地方公共団体及び関係民間団体の協力を積極的に求め、また、これらの団体の指導の対象となった事案については、それぞれの実情に応じ、その指導の効果が生かされるよう配意する。

    (ロ)確定申告期における納税相談は、そのための来署依頼を原則として行わず、申告書の作成に必要な事項について相談を行うこととし、納税者自身による自発的な申告の慣行を定着させるよう努める。

    (ハ)調査は、事後調査を主体として実施するが、調査対象選定のための申告審理事務は、細かいものを省略して効率的な処理を図るなど合理的運営に努める。
     また、事後処理についても高額中心に行うとともに、適正申告を行う納税者を長期的に育成していく見地から運営する。

    (ニ)営庶業所得者については、白色申告者と青色申告者の別及び所得者層の別に応じて適切な指導及び調査を行うこととし、白色申告者に対しては青色申告者より高い調査割合を確保するとともに、高額所得者を中心として調査内容の充実に努める。

    (ホ)その他所得者については、所得のは握が困難であるので、その管理及び調査について相当の努力をする必要がある。従って、調査技法の開発に努めるとともに、都会署におけるその他所得の調査事務量を増加し、適切な調査対象を選定し、充実した調査を行う。

    (ヘ)一般農家に対する標準課税の事務及び農外所得のは握については、地方公共団体及び農業団体の積極的協力を求めることとし、特殊経営農家については、個別調査・指導方式による。
  • ハ 法人税関係

    (イ)申告納税制度の下での法人税事務は、自主的に適正な申告を行う法人を着実に育成することを目標としなければならない。
     このため、個々の法人の申告内容を的確には握し、その内容に応じて質的な区分を行い、指導によって適正な申告が期待できる法人に対しては、きめ細かな指導を根気よく行うとともに、他方、大口、悪質な不正を行っている法人又は不正計算を繰返している法人に対しては、常に徹底した調査を行い、調査を通じてその是正を図るなど、その実態に即した指導又は調査を行う。

    (ロ)法人の質的区分に応じた事務運営の体制は、年々の法人税事務の着実な積重ねの上にはじめて可能となるものであるから、法人に対する指導又は調査の際には握したその人的構成、帳票組織、内部けん制の状況等の情報は、申告内容の検討結果とともに、その都度確実に記録保存し、法人の長期的管理に資することに努める。

    (ハ)法人数が年々増加し、取引が大型化かつ複雑化している現状において、法人の実態を的確には握するためには、職員一人一人の創意工夫によって、事務処理の効率化を図る必要がある。
     このため、事務分担の方式については、あらかじめ業種又は地域等により分担を定め、同一の職員に調査・指導対象の選定から調査・指導及びその事後措置に至る一連の事務を担当させることを原則とし、個々の職員の責任を明確にし、その能力を最大限に発揮できる体制を確立することに努める。
  • ニ 源泉所得税関係

     源泉徴収制度の運営の適否は、源泉徴収義務者のこの制度に対する理解と認識のいかんによって影響されるところが大きいことに顧み、指導をその事務運営の基本として、優良な源泉徴収義務者の育成に努める。また、管理が多元化している現状に対処し、源泉所得税事務に関する責任体制を明確にして、その事務処理の的確化が図られる管理体制を確立する。
     このため、源泉所得税事務における施策の重点を次の諸点に置く。

    (イ)源泉徴収義務者のは握は、源泉所得税事務の基盤となるものであるから、あらゆる機会を通じて源泉徴収義務者を確実には握することに努める。また、その業種、業態、規模等に応じて適切な指導を行い、関係法令、通達等その制度の周知徹底を図り、優良な源泉徴収義務者の育成に努める。

    (ロ)法源同時調査及び所源同時調査の体制は、調査事務の効率的な運営、納税者感情などの見地から設けられたことに顧み、一層これを推進する。
     源泉単独調査をはじめとするその他の事務については、専担制による事務運営の体制を確立し、これを中軸として源泉所得税事務に従事する職員の源泉徴収制度に対する認識を高め、事務処理の的確化に資する。

    (ハ)源泉所得税に関する事務を所掌する所得税及び法人税に関する部門並びに管理・徴収部門の各職員は、他の事務系統で所掌している事務との関連性を十分認識し、それぞれの事務が一体として運営されるよう、各事務系統間の連絡協調について特段の努力を払う。
  • ホ 資産税関係

     国民の生活水準の向上、資産の蓄積の増大等に伴い、資産税の課税の適正化に対する社会的要請がますます大きくなっている。
     従って、資産税事務の運営に当っては、次の諸点に配意して適正な課税の実現に努める。

    (イ)資産税事務について、限られた人員で適正かつ効率的な運営を行うため、事務又は事案の重要度に応じてか働量の重点的配分を行い、合理的な運営の徹底に努める。
     この場合、例えば譲渡多発署にあっては譲渡所得事務に重点を置くなど、各署の実情に応じて各事務への適切な事務量の配分を行うほか、必要に応じ、局員又は他署職員による応援を適切に実施し、局署を通ずる機動的な事務運営に努める。

    (ロ)資産税関係の納税者は、関係法令などになじみが薄い場合が多いので、地方公共団体及び税理士会、農業協同組合等の関係民間団体を通じて積極的な広報活動を行い、関係法令等の周知を図る。
     また、税の相談日、譲渡所得の集合説明会等の機会を活用して、自主的に適正な申告がなされるよう適切な指導を行うとともに、納付方法についても必要な説明をする。
      なお、来署依頼による納税相談を実施する場合、その対象の選定に当っては、少額事案を極力省略して高額重点の考え方を徹底するとともに、その後の事務処理が効率的にできるように十分配意する。

    (ハ)調査事務量を確実に確保するため、納税相談事務の合理化、内部事務の簡素化など事務処理の一層の効率化に努める。
     実地調査は、資産税の各税目を通じて脱漏税額の大きいと認められるものに重点を置き、各事案の内容に応じ必要かつ十分な調査日数を投下してこれを処理する。
     特に譲渡所得事案については、事務年度内の処理の完結にこだわることなく、他事務系統との連携調査等又は同行調査を積極的に展開するよう配意する。 (ニ)財産評価の適否は、相続税、贈与税の適正・公平な課税に極めて大きな影響を及ぼすものであるから、評価基準の作成に当っては、その精度の向上に努め、評価基準の適用に当っては、評価財産の個別事情に即応した的確な運用に配意する。

2 調査査察関係

(1)調査課事務運営の目標と重点事項

 調査課所管法人及びその役職員は、我が国経済界を主導する重要な役割を果しており、その社会的、経済的影響力は極めて大きく、それらの納税義務履行の動向が全納税者の納税道義に心理的効果を及ぼすという面からも、また、取引全体の公正明朗化を左右するという面からも、全納税者に与える影響は、極めて大きいといわなければならない。
 従って、所管法人の実態を的確には握し、その法人に対し適正な課税を行い、また、必要に応じ役職員の当該法人と関連のある所得についても実態を明らかにし、その正しい課税の実現に資することは、全納税者の納税道義を高めるという税務行政の究極の目標を達成するために不可欠の課題である。
 このような見地から、調査課の事務運営においては、所管法人の申告水準の向上を通じて、所管法人を含めた全納税者が自主的にその納税義務を履行する基盤を形成することをその究極の目的とし、次の事項を基本とする。

  • イ 不正所得等のは握

     調査の基本目的は、取引の内容を解明してその実態をは握することにある。従って、調査に当っては、単なる期間損益の修正に意を用いすぎることなく、この目的に従って取引の実態をは握し、特に、大口、悪質な不正所得の発見に重点を置くこととする。
  • ロ 申告水準向上策の積極化

     所管法人に対する充実した調査を基として、申告に対する姿勢の改善を図るよう十分な指導を行い、申告が優良な法人の育成に努める。
     また、この指導の効果をその法人の所属業界、系列企業等に浸透させていくための施策を計画的かつ積極的に実施する。
  • ハ 不正取引に係る資料源開発

     不正取引の多くが取引当事者相互間の通謀によっている現状に顧み、こうした不正取引を徹底的に解明し、その一連の資料を収集することは、調査の充実のため不可欠の要件である。所管法人は、取引系列の中枢をなしており、また、取引範囲も広いので、全税務的見地から、これを資料源として積極的に開発するよう努める。

(2)査察事務運営の目標と重点事項

 査察事務は、税務行政の一環として、悪質な脱税に対する刑事責任を追及して納税道義の高揚を図ることにより、申告納税制度の維持とその健全な発展に資することを目標としており、査察に期待される役割は今後ますます増大するものと考えられる。
 このため、査察事務の運営に当っては、次の点を基本とする。

  • イ 悪質、大口な脱税の摘発

     査察事務の目的にかんがみ、真に社会的非難に値する悪質かつ大口な脱税の摘発に努めることとし、このため情報活動を一層充実し、情報源の新規開拓、情報技術の改善等を図って、査察対象の的確な選定を期する。
  • ロ 申告水準向上への十分な寄与

     査察事務は、一般の税務運営の動向に即し、全税務的基盤に立って運営されるべきものであり、このため課税部門との密接な連携の下に査察の効果が申告水準の向上に十分寄与するよう配意する。
  • ハ 組織的、効率的な事務の推進

     最近における脱税の広域化、手口の巧妙化に顧み、広域調査態勢の確立、調査技術の開発、向上等を図り組織的、効率的な事務運営に努める。

3 間税関係

(1)間税事務運営の目標と共通の重点施策

 間税事務運営においても、その目標は、もとより正しい自主的な申告と納税が行われるような態勢を確立することにある。
 このため、納税者に対して適切な指導を行うとともに、調査及び犯則取締りについては、納税者の実態に応じて一層の重点化を図る。
 今後の社会経済の発展に伴い、経済取引の複雑化と広域化が進み、また、消費税関係を中心に課税対象が増加し、多様化するものと考えられる。これに伴い、間税行政の一層の多様化と高度化が要請されるが、税務行政全体の中における間税事務のあり方に配意しながら、この要請にこたえていくためには、間税事務全般にわたって、その刷新改善を進めることが必要である。
 このような見地から、今後における間税事務の運営に当っては、次の諸点に施策の重点を置く。

  • イ 調査及び犯則取締りの重点化

     調査事務については、網羅的又は画一的な運営に流れることのないよう、経営内容、取引形態、過去の諸事績などからみて必要度が高いと認められる調査対象を選定し、また、調査に当って重点を置くべき項目を抽出し、効率的かつ深度のある調査を行う。
     また、犯則取締りは、大口かつ悪質な事案に対象をしぼって実施する。なお、小口又は軽微な事案については、調査と指導に重点を置いて処理し、じ後における適正な申告と納税が得られるよう配意する。
  • ロ 調査事務の簡素化

     調査事務の簡素化を図るため、的確な質的管理の下に重点的に調査対象を選定し、少額事案については極力調査省略を図るなど合理的な調査事務の運営に配意する。
  • ハ 広域運営の推進

     間税関係の納税者の数、種類及び規模は、署によってかなり異なっており、このような傾向は今後とも大きくなるものと考えられる。従って、納税者に対する調査を各署単位で処理する事務方式では、大口又は重要な事案に対し徹底した調査及び犯則取締りを行うことが困難となる事態が生じ、また、間税職員の調査技能の向上の機会も十分に得られなくなるおそれがある。
     このような事態に対処するため、調査及び犯則取締りの広域的運営を進めていくものとし、局間税部監視部門による犯則取締りに加えて、局間税部調査部門において、大口又は複雑困難な事案に対する調査を行い、また、署段階における調査及び犯則取締りについても、署間の広域運営を積極的に推進する。
  • ニ 間税事務の一体的運営

     間税関係の税目は多岐にわたっているので、事務計画の策定に当っては、各税目を通じて事務の重要度を総合的に判断し、重点的な計画を策定するよう配意する。また、間税事務にあっては、限られた職員が多くの税目を分担しているので、その執行に当っては、酒税、消費税を通ずる事務の一体的運営に努める。
  • ホ 直税間税統合統括官制度の犯則調査権限の適切な行使

     直税間税統合統括官制度の下においては、職員が常時又は随時、直税及び間税の両者について調査権限を有することになるので、間税の犯則取締りのための収税官吏の権限の付与及び行使に特に慎重を期する。

(2)各事務の重点事項

  • イ 酒税関係

    (イ)酒税調査は、酒類製造者に重点を置く。調査事務の運営に当っては、調査対象を十分検討して選定するとともに、それぞれの実態に応じて調査項目を抽出し、重点的、効率的かつ深度のある調査を実施する。
     なお、酒類の販売業者等に対する調査は、酒類製造者に対する調査を補完する観点から実施する。
     また、有効な資料・情報を組織的かつ計画的に収集し、その活用を図ることとし、対象の選定を的確に行うよう配慮する。

    (ロ)犯則取締りは、大口かつ悪質な事案に重点を置いて行うものとし、取締りに当っては、早期に事案の全ぼうをは握して、適切な処理を図る。
     なお、酒類の密造及び密輸入の防止のため、啓発宣伝と効果的な取締りを行う。

    (ハ)酒類販売業免許については、免許制度を必要とする行政目的に配意するほか、酒類流通の効率化及び消費者の利便を十分考慮し、適正かつ弾力的な運用に努める。

    (ニ)酒類業界を取巻く環境は極めて厳しく、今後は従来のような量的な拡大を期待することは困難であると認められる。
     このような情勢に対処するため、業者及び業界は自主的な合理化努力を一層進めるとともに、節度ある生産と過当な販売競争の是正に努め、企業基盤の強化を図ることが要請される。
     この考え方に基づき、業者及び業界団体に対し、適時適切な指導を行うこととする。

    (ホ)酒税保全担保の提供については、酒類業者の経営状況等を常に的確には握し、個々の実情に応じ、必要な限度において担保を徴求するようその運営に配意する。
  • ロ 消費税関係

    (イ)消費税は価格に織込まれて消費者へ転嫁される建前のものであるから、納税者に対し課否判定、課税標準の算定などについて適切な事前指導を行わなければ、じ後において事務執行上困難な問題が生ずるおそれがある。このため、庁局署は、関係業界の動向及び納税者の実態のは握に努め、新製品の開発、生産取引の形態の変化などに常に留意し、時宜に応じた的確な指導を積極的に行う。この場合、新規又は異例なものなど先例により難い事案については、庁局署の連絡を密にして、その取扱いの統一と迅速な処理を図る。
     なお、業種に共通な事項については、業者団体、間税協力会業種別部会等を通じ効果的な指導を行う。

    (ロ)調査は、大口又は重要な事案を対象に重点的に実施する。このため、納税者の実態を十分には握し、資料・情報を積極的に活用して、適切に調査対象を選定するとともに、それぞれの実態に応じて調査項目を抽出し、効率的な調査を行う。この場合、全国的規模の事案については、庁の指導の下に局間の連携を密にして企業単位の調査を行う。
     また、少額納税者については、調査を簡略化し、指導に重点を置いて処理する。
     なお、適正な申告を行わず、税務調査を妨害する者に対しては、き然たる態度でこれに臨み、課税の適正と納税秩序の維持に努める。

    (ハ)犯則取締りについては、資料・情報活動を充実して的確に対象を選定するとともに、徹底した調査により早期にその全ぼうをは握し、適切な見通しの下に効率的に処理する。
     なお、軽微な非違事項については、指導によりその誤りを是正させるように配意する。

    (ニ)資料・情報事務については、直税関係部門との連携を保ちつつ、組織的かつ計画的に有効な資料・情報の収集に努め、一元的な管理の下にその効果的な活用を図る。
  • ハ 鑑定関係

    (イ)酒類、揮発油等の分析、鑑定に当っては、これが間接税の適正かつ公平な課税を実現するための基礎であることを深く認識し、正確かつ迅速に行うとともに、関連部課等と緊密な連携を保ち、その適正な運営に努める。

    (ロ)酒類製造者に対する技術指導に当っては、酒類行政全般の動向をは握し、企業の合理化と業界の近代化を技術面から推進して、良質な酒類の安定的供給に資するよう努める。また、公害防止に関しては、主務官庁と連携を保ちつつ適切な指導を行う。

    (ハ)近年、分析法は顕著な発展を遂げ、また、技術革新に伴い石油工業をはじめとする関係業界の技術水準が急速に進歩しているので、常に新知識の吸収に努め、分析、鑑定能力の向上を図るとともに、調査手法の開発に努める。

4 徴収関係

(1)微収事務運営の目標と共通の重点施策

 税務行政は、賦課事務とともに徴収事務が適正に行われることによって、はじめてその目的を達成することができる。徴収事務の遂行に当っては、このことを十分に認識し、租税債権の確実な管理と、その的確な徴収に努めることが必要である。
 徴収事務の運営については、従来から確実な債権管理を図るとともに、事務の合理化、効率化について格段の努力を払ってきた結果、事務能率の向上には著しいものがあるが、更に今後の社会経済の進展に即応するため、事務の合理的、効率的運営を図ることが一層要請される情勢にある。
 このような見地から、今後における徴収事務運営の施策の重点を次の諸点に置く。

  • イ 自主納付意識の高揚

     徴収事務の終極的な課題は、自主納付態勢を確立することにある。
     そのためには、的確な滞納整理の実施とあいまって、平素の事務を通じて、あらゆる機会を生かし、納税者の自主納付意識の高揚を図ることが肝要である。このため、賦課部門と一体となった納付指導、広報活動等による納税道義の高揚を図るとともに納税貯蓄組合、青色申告会、法人会等の関係民間団体の協力を得て納税思想の水準を高めるよう努める。
  • ロ 確実な事務処理と事務の合理化

     徴収事務の基本は、租税債権を確実に管理することにある。
     今後においても、この基本にのっとり、事務の簡素化の要請と事務処理の確実性の保持との調整を図りつつ、一層の合理化に努める。
     特に、電子計算組織による事務処理は、今後における事務合理化の基幹となるものであるので、徴収事務においてもその対象範囲の拡大を図るとともに、この組織の採用に伴って派生する諸問題についても、技術上の要請と行政上、事務上の要請との調和を図りつつ解決に努め、事務処理体制を整備する。
  • ハ 機動的事務運営と重点的な滞納整理

    (イ)限られた人員で事務を能率的かつ円滑に遂行するため、事務の重要度、時宜に応じた合理的な事務計画を策定するとともに、管理・徴収両事務の特質と差異に着目しつつ管理事務の平準化を図るため、時期的な繁閑に応じて、両事務を通ずる機動的運営を図る。

    (ロ)滞納整理に当っては、情報管理を的確にし、滞納者個々の実情に即した整理の進展を図るとともに、整理対象事案の増大に対処するため、その質的管理に十分配意し、重点的、効率的な滞納整理を行う。

(2)各事務の重点事項

  • イ 管理関係

    (イ)租税債権を確実に管理するには、賦課部門との連絡を円滑に行うことが肝要であり、このため、申告書、更正決定決議書等の回付、納税者の異動に伴う処理、事故原符の調査等につき、連携の強化、協力体制の確立に努める。

    (ロ)管理事務の現状に顧み、繁忙期における事務処理を円滑に行うことは、運営上特に留意を要することであり、今後における事務量の増加に対処するためにも、その事務の実態を十分には握し、分析した上、実情に応じて、非常勤職員の活用、各種事務の処理時期の調整、納付相談事務の合理化及びその際における賦課部門との協調等について検討し、総合的、重点的な事務運営を図る。

    (ハ)物納延納の許可事務については、常に進行管理を的確にするとともに、許否の方向を速やかに決定し、迅速、適正な事務処理を行うことに努める。このため、賦課部門との連絡協調、財務局等の関係機関との協議、納税者の指導等を積極的に行うよう配意する。

    (ニ)振替納税制度については、引続きその普及を図ることとし、勧奨に当っては、納税貯蓄組合、青色申告会、金融機関等の協力を得るよう特に配意する。

    (ホ)納税貯蓄組合の指導に当っては、税務行政全般に対するよき理解者、よき協力者層の拡大に資する見地から、納税資金の貯蓄、期限内納付の指導等のほか税務に関する広報を中心とした諸施策を推進するとともに、青色申告会、法人会等の関係民間団体との連携等を通じて活発な活動を行えるよう配意する。
  • ロ 滞納整理関係

    (イ)租税負担の公平の理念は、適正に課された租税を確実に徴収することによってはじめて達成されるものであり、滞納整理に当っては、この点を十分に認識し、国税徴収法その他関係諸法の定めるところに従い、適正に処分を執行しなければならないものである。 また、常に、賦課部門との連携に心掛け、納税者から課税についての疑問が出された場合には、早急に賦課部門へ連絡してその解決を図るなど適切な措置を講ずる。
     なお、租税の徴収に当っては、第三者の権利と競合する場合が少なくないので、その権利の尊重に留意するとともに、法律に定められた諸制度の運用については、いやしくも拡張解釈による不当な処分や不十分な調査による安易な処分を行うことのないよう配意する。

    (ロ)滞納整理に当っては、大口滞納者、悪質滞納者、その他の早期に保全を要する滞納者に対する処理の充実を図り、必要に応じて訴えを提起するなど、継続的な質的整理を促進する。これらの滞納者以外のものについては、通信による催告を主体とした滞納整理方式の活用を図る。

    (ハ)管理者は、効率的な滞納整理を推進するため、大局的見地からの諸施策の決定、重点整理対象の選定、整理の進ちょく状況のは握などに十分留意し、進行管理の徹底に努める。

    (ニ)滞納整理事務を効果的に運営するため、局署の実情に応じて、職員の重点的配置を行い署間の広域運営による滞納整理の推進を図る。また、滞納の都市集中化に対処して署の滞納整理を促進するため、局国税徴収官による機動的な応援体制の強化を考慮する。

5 不服申立て関係

(1)異議申立て関係

  • イ 異議申立事案の調査に当っては、その異議の申立てが原処分に対する不満から生じたものであることに顧み、その申立てがなされた事情等について、その異議のあるところを十分くみ取り、公正妥当な処理に努めることはもちろんであるが、他面、安易な妥協を排除して、正しい課税標準のは握に努める。
  • ロ 異議申立事案の早期処理については、改善の跡が認められるが、更に一層処理の促進に努め、いやしくも事務の進行管理が不十分なためにいたずらに日時を経過することのないよう、また、処理の内容については、審理が不十分であるため異議申立段階で処理することができる問題についてまで、その解決を審査請求段階に持越したりすることのないよう、管理の充実を図る。

(2)審査請求関係

 国税不服審判所における裁決は、賦課徴収に当る処分庁から独立した立場において、かつ、行政部内として最終的に行う判断であるから、事案の処理に関係のあるすべての者は、それぞれ次の諸点に十分配意するとともに簡易迅速な手続による国民の権利救済が行政不服審査制度の主要な目的となっていることにかんがみ、審査請求事案の効率的な処理に努める。

  • イ 総額主義に偏することなく、争点主義の精神を生かして審理するのであるから、審査を申立てられた事項、答弁書に記載された事項、更に審査請求人の反論内容を基礎として審理を行う。
     このため、必要がある場合には、審査請求の趣旨、理由が明らかになるよう補正を求めるなどの措置を講ずるとともに、他方、原処分庁においても、当該趣旨、理由に対し具体的に答弁することによって、争点の明確化に努める。
  • ロ 合議体の構成員は、議決につきそれぞれ独立した権能を与えられている趣旨に顧み、合議に当っては、各人が十分に意見を開陳し、公正妥当な結論に到達するよう議を尽す。
  • ハ 調査、審理に当っては、不服申立手続上の諸権利を尊重するとともに、質問検査権の行使に当っても、審査請求人の正当な権利利益の救済の趣旨に反しないよう留意する。
     なお、審査請求人の主張に相当の理由があると認めるときは、支障のない限り、徴収の猶予、滞納処分の続行停止等の措置を講ずるよう、徴収の所轄庁に求める。